電子部品検査の効率化と高精度を実現する画期的なデジタルマルチメーター
近年、スマートフォンやパソコンなど、様々な電子機器に搭載されるチップコンデンサーやチップ抵抗などの電子部品には、高い品質が求められています。これらの部品の生産現場では、高性能なデジタルマルチメーター(DMM)を用いた検査が不可欠です。しかし、従来のDMMは校正のために現場から持ち出す必要があり、生産停止や代替品購入によるコスト増加、輸送中の精度劣化といった課題がありました。
産業技術総合研究所(産総研)と株式会社エーディーシーは、これらの課題を解決するため、世界で初めて
基準電圧源を脱着可能な高精度DMMを開発し、製品化しました。
基準電圧源の脱着による校正の効率化
本DMMの最大の特長は、
基準電圧源がモジュール化され、DMM本体から取り外せることです。これにより、校正期間中は基準電圧源のみを校正機関に持ち出し、DMM本体はそのまま検査に使用できます。従来のように、DMM本体を現場から持ち出す必要がなくなり、生産停止や代替品購入によるコスト増加を大幅に削減できます。
独自の技術で高精度を維持
基準電圧源には、内蔵バッテリにより通電状態を保てるため、安定性を維持したまま校正が可能です。また、DMM本体には、基準電圧源とは別に、短期間の安定度を担保する基準電圧源が内蔵されているため、基準電圧源の校正期間中でも、DMM本体は通常通り使用できます。
測定精度向上と運用コスト低減の両立
これらの技術により、DMM本体を現場から持ち出すことなく、効率的に計量トレーサビリティを確保できます。これは、電子部品の品質管理において、測定精度の向上と運用コストの低減を同時に実現する画期的な技術です。
電子部品検査の未来を拓く技術
産総研とエーディーシーは、今回の成果をさらに発展させ、基準抵抗器や基準周波数源などもモジュール化し、マルチ基準源モジュールの開発を目指しています。将来的には、様々な測定器のモジュール化が進み、より効率的で高精度な検査が実現すると期待されています。
まとめ
脱着可能な基準電圧源搭載のDMMは、電子部品検査の効率化と高精度を実現する画期的な技術です。この技術は、電子部品の品質管理を革新し、日本の製造業の競争力強化に大きく貢献する可能性を秘めています。