人事施策「1on1」に潜む落とし穴とその効果を探る
最近、多くの企業が導入を進める「1on1」施策。その目的は、上司と部下のコミュニケーションを定期的に行い、組織のパフォーマンスを向上させることです。しかし、株式会社Maxwell’s HOIKOROとConsulente HYAKUNENが共同で発表した調査レポートでは、この「1on1」の実態とともに、その効果に対する疑問が存在することが認識されています。
背景と目的
「本当の人的資本経営を実現する唯一のサーベイアプリケーション」として登場した「TSUISEE」は、組織のデータ解析を通じてこれまでの人事施策の限界を打破しようとする企業です。彼らの調査結果は、組織におけるコミュニケーションの重要性を再認識させるものでありながらも、同時にその実施方法や効果に対する見方の変革を促しています。
本レポートでは、最初に「1on1」がどのような背景で導入されているのか、そして、上司と部下の関係性がどのように影響を及ぼすのかを振り返ります。特に、マネジメント力のない上司が「1on1」を行うことで得られる効果に焦点を当て、その限界を探ることが目的です。
「1on1」がもたらす違和感
「1on1」は一見、極めて自然な施策のようですが、その名前が付いた途端、特別なものとして扱われる点に違和感を感じざるを得ません。「上司と部下のコミュニケーションが欠かせない」という観点からは、何も変わらない行為が、特異な人事施策として脚光を浴びる図式が出来上がっています。
この違和感の根底には、実際の結果が求められる現実もあります。「1on1」の導入を通じて、部下のモチベーションやパフォーマンスが本当に改善されるのか。この疑問に対する答えを探るべく、我々は1,000名に及ぶビジネスパーソンを対象に調査を行いました。
調査結果と考察
調査によれば、マネジメント力のある上司にとって、1on1を行うか否かは部下のパフォーマンスに顕著な影響を与えないことが明らかになりました。逆に、マネジメント力のない上司がオープンな1on1を行うと、そのパフォーマンスは向上する傾向にあります。しかし、この改善が実際に上司のマネジメント力の不足を補うものとは言い切れないのです。
特に、先輩社員がマネジメントを代行している環境においてのみ、上司の1on1が有効であることがわかりました。つまり、マネジメント力のない上司が行った「1on1」の効果は、あくまで周囲にいる他のプレーヤーの支えが前提となっているのです。
将来的な施策と考え方の変革
本調査は、今後の人事施策の参考となる重要な知見を提供します。しかし、「1on1」施策が機能するためには、上司自身のマネジメント能力と同時に、先輩社員との連携が肝要であることが再確認されました。単なる施策の導入に留まらず、各々の役割を再考しながら組織の実態に沿った施策を考えることが求められています。
最後に
「1on1」の導入は、間違いなく今の時代に求められる施策かもしれませんが、それだけで組織全体のパフォーマンスを向上させることは難しいと考えます。真に効果的なマネジメントのためには、関与者全員が一体となり、施策の本質を理解する必要があります。
これからの「1on1」施策に対する取り組みには、私たちが抱えた疑問を解消していく努力が欠かせません。次回以降のレポートでは、さらなる解析を通じて、上司がどのように1on1を行うべきかについて論じていきます。