種子の発芽温度解明
2024-07-09 15:20:24

種子の発芽温度を決定する仕組みを解明!気候変動に対応する新技術への期待

種子が発芽する温度、その秘密を解き明かす!



植物の種子が発芽する時期は、種子自身の休眠状態と周囲の温度の絶妙なバランスによって決まります。しかし、種子がどのように温度を感知し、発芽のタイミングを正確に調整しているのか、その仕組みは長らく謎でした。

今回、明治大学農学部の川上直人教授らの国際共同研究グループは、種子が発芽可能な温度範囲を決めるメカニズムを解明しました。その鍵を握るのは、酵母から植物、動物まで様々な生物に共通する細胞内情報伝達経路「MAPキナーゼカスケード」です。

研究チームは、シロイヌナズナという植物を用いて、発芽に重要な役割を果たすタンパク質リン酸化酵素「MKK3」に着目しました。MKK3は、種子の休眠状態と環境温度の組み合わせによって活性化され、植物ホルモンの働きを調整することで、発芽の温度範囲を調節することが明らかになりました。

MKK3-MAPキナーゼカスケード:発芽の司令塔



MKK3は、MAPキナーゼカスケードと呼ばれる情報伝達経路の一員です。このカスケードは、環境変化を感知して細胞内のシグナル伝達を活性化する役割を担っています。研究チームは、MKK3が活性化されると、MPK7という別のタンパク質リン酸化酵素が活性化されることを発見しました。MPK7は、植物ホルモンの合成や分解に関わる遺伝子の発現を制御することで、発芽を促進するのです。

さらに、研究チームは、MKK3を活性化するMAPKKK19とMAPKKK20という2つのタンパク質も発見しました。これらのタンパク質は、種子が発芽に適した温度を感知すると、活性化され、MKK3-MAPキナーゼカスケードを起動させる役割を果たします。

気候変動に対応する種子発芽制御技術への期待



今回の研究成果は、種子が温度を感知して発芽の時期を制御する仕組みを解明しただけでなく、気候変動に対応した種子発芽制御技術の開発に繋がる可能性を秘めています。

例えば、穀物の穂発芽は、収穫前に種子が発芽してしまう現象で、収穫量や品質の低下に繋がります。MKK3-MAPキナーゼカスケードを制御することで、穂発芽を防ぎ、安定した収穫を実現できる可能性があります。

また、高温や低温による発芽阻害は、作物の生育を阻害する大きな要因です。MKK3-MAPキナーゼカスケードを調節することで、高温や低温に強い品種を開発し、気候変動の影響を軽減できる可能性があります。

今後の研究では、MKK3-MAPキナーゼカスケードの詳細な仕組みを解明し、種子発芽制御技術の実用化を目指します。


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