先進技術で実現するカーボンネガティブ社会への道筋
東京都立大学を中心とした産学連携の研究チームが、新たに開発した二酸化炭素回収技術「DAC(Direct Air Capture)」のプロジェクトを始動しました。この研究は、内閣府の「ムーンショット型研究開発事業」に採用され、2050年を見据えた持続可能な資源循環を実現することを目指しています。
プロジェクトの背景と目的
高まる地球温暖化の問題に対抗するため、二酸化炭素の回収は急務です。今回の研究では、自然の風を活用してエネルギーコストを抑えながら、二酸化炭素を効率的に回収するシステムを構築します。これにより、2050年までに毎年1.5億トンの二酸化炭素を回収し、カーボンネガティブな社会を達成することを目指しています。
研究開発の主要技術
1. 固定型パッシブDACシステム
全方向集風技術を用いた固定型のシステムでは、アミンと呼ばれる物質を使って効率的に二酸化炭素を吸収します。これにより、送風エネルギーを使うことなく、コストを大幅に削減しつつ二酸化炭素を貯蔵します。
2. 移動型パッシブDACシステム
トラックや船舶などの走行風を利用して、動力を使わずに外気から二酸化炭素を回収するシステムの確立を目指します。
3. マイクロ波によるCO2脱離回収システム
生成された固体カルバミン酸をマイクロ波で直接加熱することで、二酸化炭素を効率的に回収する技術の開発にも取り組んでいます。再利用可能なアミン吸収剤も特徴の一つです。
このプロジェクトの総事業費は約19億円で、2024年度から2029年度までの計画が進行しています。特に2027年度に行われる中間審査は、事業の進捗を確認する重要な機会です。
環境問題への貢献
新たに開発されるDAC技術は、持続可能な資源循環社会の実現に寄与します。回収された二酸化炭素を資源として再利用することで、様々な有用な炭化水素や化学製品へと変換可能です。今後は、これらの技術が社会に実装されることも期待されています。
まとめ
持続可能な未来に向けて、革新的な技術の開発が進むこのプロジェクトは、国内外の環境戦略にも大きな影響を与えるでしょう。この研究を通じて、二酸化炭素を回収し、有効利用するための新たな道が開かれることに期待が寄せられています。今後も進展に注目していく必要があるでしょう。