チューリングが完全自動運転を支える「Gaggle Cluster」を発表
日本のスタートアップ企業、チューリング株式会社が新たに発表したのは、完全自動運転技術の開発を目的とした計算基盤「Gaggle Cluster」です。この基盤の構築は、NTTドコモグループの企業からの技術的支援を受け、成功に至りました。特に、NTTPCの先進的なインフラ提供が大きな役割を果たしています。これにより、大規模なAI学習における計算能力を大幅に向上させることが期待されています。
Gaggle Clusterの特長
「Gaggle Cluster」は、96基のNVIDIA H100 GPUを備えています。この高性能な計算基盤は、効率的なデータ処理を可能にし、サーバー間の通信のボトルネックを解消するために、NVIDIA InfiniBand/NDR400を用いたネットワークを採用しています。また、All-Flashの分散ストレージを利用することで、分散学習の性能を最大限に引き出し、まるで「単一の計算機」のように動作します。このため、大規模な深層学習タスクに最適な環境が整えられています。
自動運転AI「TD-1」の開発
この新しい計算基盤の導入により、チューリングは独自の自動運転AI「TD-1」を開発しました。現在、TD-1はチューリングの「Tokyo30」プロジェクトの一環として、走行試験を行っています。このプロジェクトでは、2025年12月までに人間の介入なしに都内を30分間走行できる自動運転システムを目指しています。
TD-1は、カメラ映像を唯一の入力として使用するAIです。周囲のマップ情報や車両・歩行者の認識、さらには自身の運転操作までを単一のモデルで判断・実行します。これにより、自動運転に必要なすべての情報処理をAIが一手に行うことが可能です。
Gaggle Clusterの多用途での活用
Gaggle Clusterは自動運転AIの開発にとどまらず、生成AIの開発にも活用されています。今年の8月には、自動運転向けの生成世界モデル「Terra」を発表し、9月にはVLAモデルデータセット「CoVLA Dataset」の公開を行いました。これらの成果は、現実世界における物理法則や物体間の相互作用を理解するための重要な要素となります。今後、Gaggle Clusterの稼働によって、さらなるモデル開発が進められ、自動運転技術の実現に向けた動きが加速することでしょう。
企業間の連携とサポート
チューリングがGaggle Clusterの構築を進める中で、NTTPCはその経験を生かし、インターコネクト技術とストレージ設計に関する貴重なサポートを提供しています。また、株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ(NDV)の出資も受けており、失敗のリスクを抑えつつ、長期的なビジョンの下での技術開発が期待されています。NDVは、スタートアップとNTTグループとの架け橋として、新たなビジネスチャンスを創出することを目指しています。
チューリングの未来へ
チューリング株式会社は、自動運転技術の先駆者として、E2E(End-to-End)の自動運転システムの開発に注力しています。カメラから得られたデータをもとに、運転に必要なすべての判断をAIが行うというビジョンは、まだ初期段階にありますが、その実現に向けた多くの動きが進行中です。今後、Gaggle Clusterのフル活用により、新しい自動運転システムがさらに進化していくことを期待しています。