水上ドローンと水中ドローンによる藻場測定の実証プロジェクト
2023年、神奈川県で注目すべきプロジェクトが始まりました。一般社団法人BlueArchと株式会社UMIAILEが協力し、”船舶レス”な藻場観測の新たな手法を実証することになったのです。このプロジェクトは、水上ドローン(ASV)と水中ドローン(ROV/AUV)の連携を利用することで、従来の方法よりも効率的に「ブルーカーボン」関連データを取得しようとするものです。
プロジェクトの背景
藻場は、ワカメやカジメなどが繁茂し、魚介類の産卵場や成育場といった生態系において非常に重要な役割を果たしています。また、最近ではCO₂を吸収・貯留する「ブルーカーボン生態系」としても注目されています。しかし、神奈川県内の藻場は1990年から2022年までに約53.7%も減少しており、深刻な危機に直面しています。
この背景を受けて、藻場再生活動の支援策として、「Jブルーカーボンクレジット」と呼ばれる制度が注目されてきました。しかし、従来の測定手法では、潜水士が手作業でデータを取得する必要があり、普及が進まないという課題がありました。
新たなアプローチ
本プロジェクトでは、水上ドローンを中継ノードとして、水中ドローンを利用した観測を実現します。これにより、従来の手法に比べて以下の利点があります。
1.
調査エリアの拡大
従来の方法では100m以内に限られていた調査範囲が、無線通信を利用することで1km以上に拡大されます。
2.
リアルタイム映像伝送
水上ドローンを中継にすることで、水中ドローンが撮影した映像をリアルタイムに陸上に伝送できます。これにより、即時に判断や対策が可能となります。
3.
自律回避機能
水中ドローンには、海底との距離を感知し、自動で衝突を回避する機能が搭載されます。これにより、遠隔操作でも安定した観測が可能になります。
プロジェクトの実施概要
実証プロジェクトは、以下の流れで進められます。
1.
開発段階(2025年12月〜2026年1月)
ソフトウェア及びハードウェアの具体的な検討と開発が行われます。
2.
実地試験(2026年1〜2月)
実海域でハードウェアの連携、映像の伝送、遠隔操作の検証を行います。
3.
本調査(2026年3月)
城ヶ島のワカメ場で計測を実施し、技術評価が行われます。
4.
Jブルークレジット申請(2026年9月)
実証データをもとに、Jブルーカーボンクレジットの申請が行われます。
まとめ
この実証プロジェクトは、日本の水中ドローン技術を駆使し、藻場の保全とブルーカーボンの測定をより効率的に行うための新たな道を示しています。環境保全に貢献するこの取り組みが、今後の藻場の再生や保全活動に大きく寄与することが期待されます。さらに、この技術が普及すれば、藻場の測定作業におけるコスト削減と環境への配慮が同時に実現されることでしょう。