音楽の多様性が進む中で、ギターはジャズというジャンルに革命を起こしてきました。新刊『越境するギタリストと現代ジャズ進化論』がその過程を鮮明に描き出します。本書は、エレクトリック・ギターがどのようにジャズを現代化し、多様な音楽表現に寄与してきたのかを探る試みです。
ジャズは本来、管楽器や鍵盤楽器が中心の音楽でしたが、1960年代後半からはその表現の幅が広がり、ギターの存在感が増していきました。この時期、エレクトリック・ギターは多様化する音楽シーンの中でその役割を確立し、ジャズと他のジャンルとの境界を越える存在となったのです。
本書の著者、佐藤英輔氏は、ジャズとギターの関係性を多角的に分析しており、米国のブラック・ミュージック史におけるジャズの再考を通じて、ギターの不可欠な立ち位置を指摘しています。さらに、マイルス・デイヴィスやオーネット・コールマンといった先駆者たちがどのようにギターを作品に取り入れたのか、また、ジミ・ヘンドリックスの影響力やオルガン・ジャズにおける意味など、これまでのジャズの歴史では触れられなかった視点を提供します。
内容は章立てされており、各章ではギターがどのようにジャズの革新をもたらしたのかが語られています。たとえば、「ギターはモダンジャズにおいて傍系の楽器であった」という視点から始まり、ギターを物差しとした米国黒人音楽の流れや、重要なアーティストたちの関与が詳述されています。特に、オーネット・コールマンの音楽スタイルや、ギタリストたちの挑戦、そして現代の人気ギタリストたちの動向に関する考察が盛り込まれています。
この論考を通じて、読者はギターという楽器を通じて、モダン・ジャズがどのように発展してきたのかをり深く理解できます。また、本書は著者の長年のインタビューやライブ体験に基づいており、実際の音楽シーンの息吹を感じることができる一冊です。ジャズとR&B、ロックといったポップ・ミュージックとの関係にも触れながら、これからのジャズの在り方を模索していきます。
この本を通じて、アート・リンゼイも述べたように、電気化されたギターがジャズの核心にケイオス理論をもたらす様子が描かれ、新しい音楽の地平を開く期待が高まります。
発行はリットーミュージック、発売日は2024年9月20日で、定価は2,970円です。これからのジャズを語る上で外せない一冊をぜひ手に取ってみてください。