富士通が開発した新しい空間World Model技術
2025年12月2日、富士通株式会社は、人とロボットが共に生きる新たな未来を見据えた画期的な技術を発表しました。その名も「空間World Model技術」。この技術は、現実世界の物理法則を理解し、人とロボットの相互作用を予測するAI、すなわちPhysical AIの研究の次のステップとされています。
Physical AIの重要性と現在の課題
AIの進化により、これまで主にデジタルな環境での活用が多かったAIの適用が、現実世界への展開へと進んでいます。中でも、Physical AIは自動運転やスマートファクトリーなど、実空間での課題解決において重要な役割を果たすと期待されています。しかし、現在のPhysical AIは、限られた製造環境や物流の場面での利用にとどまっており、私たちが日常的に利用する住宅やオフィスのような動的環境では、その適用が非常に難しいという課題を抱えています。
多様な人やロボットの動きがある中で、次の行動を予測するのは容易ではありません。これに対し、富士通はAIとコンピュータビジョン技術を駆使し、人とロボットの協力を促進するための「空間ロボティクス研究センター」を設立し、研究を本格化しました。
空間World Model技術の特長
この新しい技術には主に2つの特長があります。まず一つ目は、
3Dシーングラフに基づく空間World Modelの構築です。この技術により、防犯カメラやロボットカメラが捉える視界の違いを克服し、動的に変化する空間をリアルタイムに把握できるようになりました。この結果、複雑な環境での人とロボットのスムーズな協調動作が可能となります。
二つ目は、
未来の行動を予測できるモデルの構築です。人やロボットがどのように動くかを単に見るだけでなく、その背景にある意図を推測することが鍵です。この技術を利用することで、複数の行動主体が協力して動く最適な方法を算出できるため、自律ロボット間の衝突回避や効率的な協調動作プランの作成が実現します。
未来への展望
この空間World Model技術は、2026年1月にアメリカのラスベガスで開催されるCES2026にてデモ展示される予定です。また、富士通の研究開発拠点であるFujitsu Technology Parkを使用し、2026年度中にも技術実証が進められる見込みです。今回の発表により、物理世界におけるAIの進化が一層加速され、人とロボットが協調し合う未来が現実味を帯びてきています。
さらに、富士通はSDGsに貢献するという視点からもこの技術の実用化を目指しており、持続可能で信頼される社会の実現に向けて邁進しています。これからの人とロボットの共存社会に向けた可能性が広がる中で、富士通の取り組みに大いに期待が寄せられます。