尿管オルガノイドの作成
2025-06-23 10:06:47

多能性幹細胞から尿管オルガノイド作成に成功した熊本大学の研究成果

熊本大学の画期的な研究成果



2023年、熊本大学発生医学研究所の研究グループが多能性幹細胞から尿管間質の前駆細胞を誘導する方法を確立し、尿管オルガノイドを作成することに成功しました。この成果は、腎臓機能の再生医療に向けた大きな一歩となります。

尿管の重要性とこれまでの研究


尿管は腎臓から生成された尿を体外に排出する重要な役割を果たす組織で、腎臓が正常に機能するためには不可欠です。尿管は上皮と間質から構成され、これらの前駆細胞が相互に作用しながら発生します。しかし、尿管間質の前駆細胞を多能性幹細胞から誘導する方法は、これまで世界的に確立されていませんでした。

研究のアプローチ


熊本大学の研究チームは、尿管の形成に必要な細胞を多能性幹細胞から誘導するため、近年の幹細胞生物学の進展を活用しました。具体的には、胎児期のマウス腎臓を用いて、尿管間質の前駆細胞に関連する遺伝子群を同定し、これを誘導する培養条件を設定しました。この新たに開発された手法により、マウスES細胞及びヒトiPS細胞から尿管間質の前駆細胞を誘導することに成功しました。

さらに、誘導した尿管間質前駆細胞を、マウス胎仔由来の尿管上皮や多能性幹細胞から誘導された尿管芽と組み合わせ、試験管内で分化した尿管オルガノイドを再構成しました。これは、腎臓の正常な機能を担う構造を試験管内で人工的に再現する初の成功例です。

研究成果の意義


この技術は、尿管疾患の病態解明や治療法の開発に寄与するだけでなく、人工透析患者のための新たな治療法を提供する可能性があります。また、高次の腎臓オルガノイドと接続することで、尿を生成し、体外に排出できる機能を持つ腎臓を作成できる可能性も秘めています。

今後の展望


今回の研究成果により、尿管オルガノイドの質をさらに向上させ、腎臓オルガノイドとの連携を進めることが期待されています。これにより、再生医療の新たな選択肢が増えることが見込まれます。

まとめ


熊本大学の研究は、再生医療における尿管機能の再構成に向けた重要なステップを示しており、今後の腎臓病治療に多大な影響を与えることが期待されます。この研究成果は、科学雑誌「Nature Communications」にも掲載され、国内外で注目されています。

将来的には、より多くの患者に恩恵をもたらす新たな治療法の開発が望まれています。今後の研究プロセスに期待が寄せられます。

論文情報


  • - 論文名:In vitro generation of a ureteral organoid from pluripotent stem cells
  • - 著者:Yutaro Ibi, Koichiro Miike, Tomoko Ohmori, Chen-Leng Cai, Shunsuke Tanigawa, Ryuichi Nishinakamura
  • - 掲載誌:Nature Communications
  • - DOI番号:10.1038/s41467-025-60693-6
  • - URL:Nature Communications

お問い合わせ先


熊本大学発生医学研究所腎臓発生分野
担当:教授 西中村隆一
電話:096-373-6615
e-mail:[email protected]



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