ユーグレナ培養と回収効率
2023-04-17 14:00:01

エタノール添加培養によるユーグレナ回収効率向上:低コスト生産への貢献

エタノール添加培養によるユーグレナ回収効率向上:低コスト生産への貢献



近年、世界的な人口増加と化石燃料の枯渇問題を受け、持続可能な食糧・エネルギー資源の確保が喫緊の課題となっています。その解決策の一つとして注目されているのが、微細藻類です。中でも、ユーグレナ(学名:Euglena gracilis)は、パラミロンやワックスエステルなどの有用物質を生産する能力を持ち、高い注目を集めています。しかし、ユーグレナを工業的に利用するには、培養液からの効率的な細胞回収が不可欠であり、これがコスト高の大きな要因となっていました。

従来の細胞回収法には、遠心分離法や膜ろ過法などがありますが、これらは設備コストやランニングコストが高く、また、細胞へのダメージも懸念されていました。一方、重力沈降法は低コストで設備も不要というメリットがありますが、回収効率が低いというデメリットがありました。

そこで、明治大学、株式会社ユーグレナ、理化学研究所の共同研究グループは、エタノール添加によるユーグレナ培養に着目しました。エタノールは、ユーグレナの生育を促進し、パラミロン生産量を増大させることが知られていますが、細胞の沈降速度への影響については不明でした。

研究グループは、異なる濃度のエタノール(0%、0.5%、1.0%、2.0%)を含む培地でユーグレナを培養し、細胞の沈降速度を比較しました。その結果、0.5%および1.0%のエタノール添加条件において、沈降速度が最も速く、60分以内にほぼ全ての細胞が沈降することが明らかになりました。これは、コントロール条件(エタノール無添加)と比較して、大幅な改善を示しています。

さらに、細胞の大きさ、乾燥重量、パラミロン含有率、細胞形態、運動性などを調べたところ、エタノール添加により細胞径が大きくなり、乾燥重量が増加、パラミロン含有率も向上していることが分かりました。これらの変化が、沈降速度の向上に寄与していると考えられます。

本研究成果は、エタノール添加培養によって、ユーグレナの細胞回収効率を大幅に向上させ、低コスト生産を実現できる可能性を示唆しています。今後、大規模培養や様々なユーグレナ種への適用可能性を検証することで、ユーグレナバイオマス産業の更なる発展に貢献することが期待されます。

研究のポイント



ユーグレナ培養におけるエタノール添加の効果:バイオマス生産量、パラミロン生産量、細胞回収効率の向上
重力沈降法による細胞回収の効率化:低コスト生産への貢献
エタノール添加による細胞特性の変化:細胞径、乾燥重量、パラミロン含有率、細胞形態、運動性
今後の展望:大規模培養、多様なユーグレナ種への適用、産業化

研究グループ



明治大学大学院農学研究科
株式会社ユーグレナ
理化学研究所微細藻類生産制御技術研究チーム

論文情報



タイトル:Gravity sedimentation of eukaryotic algae Euglena gracilis accelerated by ethanol cultivation
雑誌:Applied Microbiology and Biotechnology
DOI:10.1007/s00253-023-12476-6

この研究は、持続可能な社会の実現に向けて、重要な一歩となるでしょう。

会社情報

会社名
学校法人明治大学
住所
東京都千代田区神田駿河台1-1
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