最近、統合失調症に対する新たな治療法としてオンライン認知行動療法が注目されています。千葉大学附属病院の研究グループが行った臨床試験では、従来の診療に加え、ウェブ会議システムを活用した新しい形の認知行動療法が統合失調症の患者にどのように影響を与えるかが明らかになりました。
この研究は、清水栄司センター長と勝嶋雅之特任研究員を中心に、2021年から2023年までの2年間にわたり行われました。試験には、陽性症状を持つ統合失調症患者24名が参加し、通常の診療のみを受ける対照群と、オンライン認知行動療法を受ける介入群にランダムに分けられました。介入群の患者たちは、自宅からタブレットPCで医療従事者と接続し、週に1回、50分間のセッションを7回行いました。
この認知行動療法では、患者が自身の感情や思考、行動を見直して問題解決や対処法を改善することを目指しました。また、強いストレスを感じた過去の出来事についても扱うことで、患者自身の精神的基盤となる「中核信念」に気づく機会を提供しました。
その結果、介入群の患者は治療前に比べて精神的な症状が有意に改善され、治療前の平均点52.3から治療後には42.8に落ち着きました。対照群ではこのような改善が見られなかったことを考えると、オンラインでの認知行動療法が効果的であることが示されたのです。
この試みは日本国内で初めてのものであり、患者のアクセス向上に貢献できる可能性を秘めています。交通手段や経済的な負担を軽減しつつ、医療者の不足を補う手段としても期待されます。ただし、オンライン認知行動療法が提供される環境の整備や、技術に対する理解促進が求められます。
従来、統合失調症に対する心理的支援は難しいとされてきました。しかし、オンラインでの提供が可能になれば多くの患者が支援を受けやすくなるでしょう。特に、経済的な負担や外出に対する不安を抱える患者にとって、この方法は新たな希望の光となるに違いありません。
さらに、この研究によって得られた知見が他の精神疾患でも活用されることが期待されています。うつ病や不安症に対するオンライン認知行動療法の研究も進行中であり、今後の展望には大きな期待が寄せられています。今回の成果が、統合失調症の治療法選択肢を広げるだけでなく、他の精神的な健康問題にも良い影響を与えることを願います。
この研究についての詳細は、国際医学雑誌『JMIR Formative Research』にて発表されています。患者に寄り添う新たな治療方法の確立が進む中、精神的健康の向上に向けた道筋が見えてきたようです。