令和7年版中小企業の賃金指標が発信する新たな賃金データの潮流
2025年4月1日より、TKC全国会が新たに発行する「令和7年版中小企業の賃金指標(賃金BAST)」が、ウェブ形式で提供されることが発表されました。この指標は、昨年の1年間(令和6年1月から12月)に収集した、日本国内の中小企業からの賃金データを基にしており、総計444,104社及び1,828,659人の賃金情報が収録されています。特に、このデータは業種、地域、年齢、勤続年数、また従業員の規模によって細かく分析されています。
賃金の新たな傾向
昨今の経済状況においては、物価の上昇や人材確保のために、特に中小企業が賃上げを検討する動きが高まっています。この背景を考慮し、令和7年版の賃金指標には新たに「平均賃金の推移」を確認できる機能が搭載され、企業が自社の賃金水準を見直すための助けとなります。
ポイント1:産業全体での賃金上昇
興味深いことに、この指標によると、どの産業でも平均賃金は過去4年間で持続的に上昇していることがわかります。コロナ禍の影響を受けた2022年には賃金が一時的に落ち込みましたが、2023年にはほぼ全ての産業において賃金が回復し、その後も安定して上昇を続けています。新型コロナウイルスの影響で止まっていた賃金水準が、しっかりと回復の兆しを見せているのです。
ポイント2:新卒社員の初任給の増加
また、新卒社員の初任給についても、全学歴(高校卒、高専・短大卒、大学卒)において前年より増加しています。具体的には、高校卒の初任給が166,000円(前年比101.2%)、高専・短大卒が190,000円(前年比102.2%)、大学卒が203,000円(前年比100.1%)となっています。これは、新卒採用における賃金の競争が高まってきていることを示しています。
TKC全国会の取り組み
TKC全国会は、賃金指標を通じて中小企業の賃金管理の改善に向けたサポートを行っています。このデータは、調査に協力した全てのTKC会員事務所に配信され、賃金や賞与を決定する際の参考資料として利用されています。
提供される資料には、賃金分布表や新卒社員の初任給、賃金比較表、そして新規搭載された平均賃金の推移などが含まれています。これにより、企業は自身のデータを業界全体や地域ごとのデータと比較し、適切な賃金設定を行うことが可能となります。特に、地域ごとの賃金格差を把握するための情報が提供されることは、中小企業経営者にとって非常に有益な要素です。
結論
「中小企業の賃金指標(賃金BAST)」は、企業が自身の賃金水準を見極め、適切な人材を確保するための重要な手段となるでしょう。TKC全国会が提供するこのデータを活用することで、企業は競争力を高め、社員の働く意欲を向上させることが可能です。今後の賃金の動向に注目しつつ、企業としての戦略を進めていく時期が訪れています。