アジア太平洋地域における商業用不動産投資が、2024年第3四半期に入って活発化の兆しを見せています。MSCIの最新レポートによると、取引活動は前年同期比で6%増加し、安定した状態を維持しています。これは、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策緩和の示唆により、市場のモメンタムが高まった影響が大きいと考えられます。
特に印象的なのは、7月にFRBが50ベーシスポイントの利下げを実施したことが、商業用不動産市場にも強い刺激を与えた点です。その結果、商業用不動産への関心が高まり、機関投資家が新たな資金を再評価されたコアセクターに流し込む様子が伺えます。
MSCIの不動産調査担当アジア責任者、ベンジャミン・チョウ氏は、「FRBの利下げが商業用不動産投資家にとっての重要なターニングポイントとなり、特に高金利市場への投資意欲を促進しました」と述べています。
日本市場については、年初に活発な取引が続いていたものの、年半ばにはその勢いが減少しています。ただし、ホテルセクターは引き続き急成長を遂げており、注目されています。また、金利上昇の影響が今後にどう出るか、注視が必要な局面にあります。
全体的な取引パイプラインは好調で、10月時点で2021年のピークに近づいています。中国と香港では取引活動が拡大しており、今後の展開が楽しみです。一方で、日本市場では日銀の利上げが影響し、市場の活発さがやや低下していますが、今後再び活発化する可能性もあります。
第3四半期では、オフィス、工業、リテールセクターが回復を見せました。特に、オフィスセクターは前年同期比で19%の増加が見られ、待望の復調と言えます。このような流れは、今後の需要にも明るい兆しを示しています。
各国のセクター動向を見ると、中国ではディストレス資産の買収が取引額の約4分の1を占める一方、リテールセクターでは価格の下落が回復を支えています。日本市場でも、ホテルセクターが成長を遂げている一方、共同住宅セクターは取引案件の発掘に苦戦しています。
シンガポールでは、機関投資家が市場の75%を占めており、越境投資も活発です。一方、香港ではリテールセクターと工業用不動産市場が好況にあります。最近のデータによると、第3四半期にはリテール市場の成長が顕著で、工業用不動産市場でも大きな動きがあるようです。
以上のように、アジア太平洋地域の商業用不動産市場は、不安定な経済状況にもかかわらず回復の兆しを見せています。今後の市場動向を注視していく必要があります。