サウジアラビアと日本、再生医療の未来を共に切り開く
株式会社サイトリ細胞研究所(以下、サイトリ)は、サウジアラビアの権威ある医療研究機関、キング・アブドゥラ国際医療研究センター(KAIMRC)との間で再生医療の国際共同臨床試験に関する趣意書を締結しました。この協業は、2025年6月26日に行われる予定で、特に「90分完結型幹細胞治療」にフォーカスを当てています。
画期的な「ワンデイ治療」
従来の幹細胞治療では、患者から細胞を採取し、それを培養するために数週間から数ヶ月を要します。これに対し、サイトリが開発した「セルーションシステム」は、患者の脂肪組織から非培養の再生(幹)細胞(ADRCs)を抽出し、わずか90分で治療に必要な状態まで精製することが可能です。この技術により、採取したその日に患者に細胞を投与できる「ワンデイ治療」が実現されます。これまでの治療で効果が薄かった変形性関節症や糖尿病性足病変、慢性疼痛などに対する新たな治療選択肢が提供されることが期待されています。
特に、この治療法は患者自身の細胞を使用するため、拒絶反応のリスクが非常に低く、感染リスクも大幅に軽減されます。このような利点により、難治性疾患に悩む多くの患者に新しい希望を提供するでしょう。
サウジアラビアの医療ビジョンとの結びつき
サウジアラビアは、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が導入した「ビジョン2030」において、医療分野を戦略的に強化する意向を示しています。KAIMRCは、同国の医療研究をリードする機関であり、国際的な医療技術の導入を積極的に進めています。この共同開発は、日本の医療技術が中東地域での医療改善に貢献するための大きな一歩となります。
中東では、生活習慣の変化に伴い、糖尿病や心血管疾患等の慢性疾患が急増しています。従来の治療法では対応が困難な事例が増えており、日本からの幹細胞治療技術がその解決の手助けとなることが期待されています。
持続可能な医療体制の確立へ
共同臨床試験では、ADRCsの治療法の安全性と有効性をサウジアラビアの医療機関で検証することに加え、地元医師やスタッフに対する包括的な教育プログラムを実施します。この治療法の最大の特徴は、高度な培養設備や専門的な技術者が不要であるため、一般の医療機関でも行えるという点です。これにより、医療アクセスが向上し、地域の医療格差解消にも大きく寄与することが見込まれています。
日本の専門家が直接現地で技術を指導し、持続的な医療技術移転を実現することが目指されています。これは単なる技術の移転にとどまることなく、中東における再生医療のインフラを構築するための社会的意義の高い試みとなります。
グローバル市場でのシェア拡大
幹細胞治療市場は、急速に成長しており、特に中東地域には大きな成長ポテンシャルがあります。今回の臨床試験が成功すれば、サイトリは中東地域での医療機器の販売や技術ライセンスの供与、医師研修プログラムの展開など、多角的なビジネスモデルを構築できるようになります。
サウジアラビアを拠点に、UAEやカタール、クウェートなど、湾岸協力会議(GCC)諸国への展開も視野に入れており、グローバル事業拡大の重要な戦略拠点となることが期待されています。
今後への期待
この趣意書が締結されたことにより、サイトリの業績は中長期的に拡大し、企業価値の向上につながると期待されています。日本の革新的な再生医療が国際的に認められ、世界の医療現場で広く活用されることを目指しています。日本発の医療技術が新たな可能性を拓く日も近いでしょう。
サイトリのADRCs技術について
サイトリが提供するADRCsは、患者自身の脂肪から抽出した生きた細胞をその日のうちに投与できる非培養型再生医療技術です。完全自動化された閉鎖型システムで処理され、感染リスクを最小限に抑えつつ迅速な施術が可能。細胞は損傷部位に自然に集まり、組織再生を促進します。すでに男性腹圧性尿失禁に関しては国内初の製造販売承認を取得しており、今後は膝関節症や虚血肢への展開を進めていく予定です。