札幌市消防局が進めるデジタル救急搬送
札幌市消防局は、加速する救急出動に対応するため、iPadとローコード開発ツールを活用した救急隊向けアプリ「NSER mobile」を導入しました。このアプリは、救急搬送のデジタル化を実現し、現場での負担軽減に寄与しています。
背景
札幌市では、年間約12万件もの救急出動があり、特に高齢化の進展に伴い、増加する搬送件数が問題となっていました。救急隊員は搬送先病院への受け入れ確認に多くの時間を取られ、コロナ禍では1件あたり30件以上の病院に連絡する必要が生じるなど、業務が過酷を極めていました。
アプリ「NSER mobile」の導入
この状況を打破するため、札幌市消防局はTXP Medicalと協力し、Clarisが提供するローコード開発プラットフォーム「Claris FileMaker」を基盤にしたアプリ「NSER mobile」を導入しました。アプリにより、救急隊員はiPadを使ってリアルタイムで患者情報や搬送先の医療機関情報を共有できるようになりました。これにより、従来の電話や紙を使ったやり取りがデジタル化され、搬送のスピードと精度が大幅に向上しています。
導入による効果
1.
受け入れ確認の効率化: アプリ導入後、複数の病院への一括送信が可能になり、搬送時間が短縮されました。
2.
情報共有の強化: 外傷の写真を事前に送信することで、医療機関が状況を理解しやすくなり、迅速な受け入れが可能になりました。
3.
受付準備のスムーズ化: iPadで免許証や保険証の撮影ができ、情報が自動的に送信されるため、医療機関の受付準備が効率的に行なえるようになりました。
4.
業務負担の軽減: 救急隊員の事務処理時間が短縮されることで、休憩や教育に充てることができるようになりました。
5.
GPSによる情報把握: NSER mobileを活用することで、救急車の位置情報を正確に把握できるようになりました。
6.
地域との連携強化: 他の消防局や医療機関と情報を共有できる体制が整い、効率的な搬送が可能となりました。
先進的なシステム開発
TXP Medicalの代表取締役であり救急科医師の園生智弘氏は、医療現場の声を重視してシステムを開発したと述べています。「NSER mobile」は、医療と救急隊のデジタル化を推進し、医療の質を向上させるための重要なツールとなっています。
今後の展望
札幌市消防局の取り組みは、全国の消防本部から高く評価されています。園生氏は、医療と救急隊のデジタル化の波を止めず、全国に展開していく考えを述べています。札幌市の事例は、デジタル技術が救急医療の現場でどのように機能するのかを示し、今後の医療現場における技術革新の可能性を示しています。
詳細やビデオは
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