航空機エンジン業界の新技術に迫る
航空機業界は、効率的でかつ低コストなエンジンの開発に日々取り組んでいます。特に、環境への配慮からCO2削減が求められる今、新しい素材開発が急務となっています。その中でも、タービンブレードに使用される新素材として期待されているのがTiAl合金です。この合金の特性を活かした低コスト量産技術が、物質・材料研究機構(NIMS)によって進められています。
TiAl合金の特性とその利点
TiAl合金は、鋳造性に優れているため、従来の製造方法に比べて低コストでの生産が可能です。さらに軽量で高強度なこの素材は、厳しい環境条件下でも耐えられる特性を持ち、航空機エンジン分野での利用が期待されています。特に、ニアネット形状による鋳造が実現すれば、加工工数の大幅な削減が可能となります。
新たな鋳造プロセスの確立
NIMSの特別研究員である鉄井 利光氏を中心に行われたこの開発プロジェクトでは、TiAl合金の組成を調整することで、従来の合金よりも優れた鋳造性を実現しました。また、重力鋳造法という新しい手法の採用により、従来の設備に比べてコストを大幅に削減できる可能性が生まれました。
課題克服のアプローチ
加えて、TiAl合金がセラミックるつぼと反応することで発生する酸素濃度の問題にも取り組みました。酸素の除去方法を確立することで、鋳造品の品質が向上しました。これにより、量産に向けたさらなる手法の提案が可能となります。
リサイクルの可能性
低コスト生産を実現する手法として、機械加工時に出る切粉のリサイクルにも目を向けています。リサイクル素材を用いて鋳造を行った結果、主成分の濃度はほぼ維持され、環境に優しい製造方法の確立へと繋がることが期待されています。
未来に向けての展望
本技術の短期的な目標は、既存の材料へと適用し、量産体制の確立を目指します。顧客との協力に基づいて試作品評価や鋳造プロセスの改善を進めます。そして、中長期的には、新たに開発したTiAl合金の認証取得を目指し、より効率の良いエンジンへの展開が期待されています。
この技術の進展により、航空機業界はより持続可能で経済的な未来へと進んでいくことでしょう。