キャリア自律と企業の人材育成の現状
リクルートは2024年に実施した「企業情報の開示と組織の在り方に関する調査」の第二弾の結果を発表しました。この調査では、20~30代の働く個人が直面しているキャリアの現状と、その背景にある企業の人材開発の課題が浮き彫りになりました。調査結果によれば、働く個人の半数以上が「充分なキャリア構築がされない」と感じており、このことが離職理由の一つとなっていることが示されました。
調査の背景と目的
日本の雇用環境は変化しており、これまでの長期雇用保障に代わって個人のエンプロイアビリティ、すなわち雇用される能力が重視されるようになっています。この中で、企業と働く個人の間でキャリア開発に対する責任を共有することが、人的資本経営においての課題となっています。
リクルートはこの重要なテーマに着目し、働く人々と企業それぞれの視点からキャリア自律の現状を分析しました。
期待と実態のギャップ
調査結果からは、働く個人が「キャリア自律」について期待を抱いているものの、実際にはその期待に応えられていないというギャップが明らかになりました。具体的には、「キャリア自律を感じている」と答えたのは24.0%にとどまり、期待度との大きな乖離が見て取れます。このギャップを埋めるためには、企業側からの支援が欠かせません。
キャリア対話の実態
また、従業員とのキャリア対話に関しての調査では、約4割の企業がその責任を中間管理職に任せきりにしているという結果が出ています。中長期にわたる対話を持つことができたと感じている個人はわずか16.8%です。これは、上司との会話の中で多くの時間が仕事の業務に割かれ、キャリアという観点での深い対話が不足していることを示しています。
離職とキャリアの関係
特に20~30代の離職経験者の半数以上は「十分なキャリア構築がされない」と感じて離職したとこたえています。この結果は、働く個人のエンゲージメントや企業への期待感が直接的に離職に結びつくことを示唆しています。上司が職務のみならず、人生に関するアドバイスを十分に行っていると感じられる割合はわずか17.5%にも達しておらず、企業はこの点にも課題を認識する必要があります。
まとめと今後の展望
最終的には、企業は働く個人の大きな期待に応えられないことで生じる失望感を理解し、構造的に対策を講じていく必要があります。会社単位、職場単位、そして個人単位で、働く人々のキャリアの未来に対する期待に向き合うことが求められています。リクルートでは今後も、より深い分析と解説を通して、企業の意識改革を促していく構えです。
調査概要
この調査は2024年3月23日から3月25日の間に実施され、総有効回答数は2,071件でした。さらに、2023年にはキャリア自律についての調査も実施されており、こちらの調査結果も今後のデータ分析に活用される予定です。詳しい内容はリクルートの公式サイトで確認できます。