特定非営利活動法人えがおさんさん(東京都新宿区)は、30年前に医療的ケアが必要な子どもたちのために、在宅生活を支える活動を始めました。当時は医療的ケア児という言葉すら一般には浸透していなかった時代で、自宅で生活する選択肢が無い中、母親たちの強い思いに寄り添い、ボランティアからスタートしたのがこの活動です。
今年で法人設立から20周年を迎えるえがおさんさんは、全国訪問看護事業協会の30周年記念式典にて、前代表理事の松尾陽子が特に小児への訪問看護の分野での功績を称えられ感謝状を受けました。この一日は、看護が単なる医療行為に留まらず、生活全般を支える重要な役割を持つことを再認識させられる機会となりました。
えがおさんさんの活動は、医療・介護・療育の枠を越え、「家庭での普通の生活」を実現するために何をどう支援するかを追求するもので、過去30年の歴史はその集大成でもあります。
1990年代には、自宅で暮らす重い障がいの子どもたちを支える制度が非常に限られていました。その当時、えがおさんさんは「家族とともに自宅で過ごせる未来を」という理念で立ち上がり、制度の枠にとらわれない形で在宅支援を行ってきました。この活動が基盤となり、今では訪問看護、居宅介護、児童発達支援といった様々なサービスが連携して支援を提供しています。
「在宅ケア業」とは、看護、介護、遊び、そして学びを包括的に捉え、すべての要素が繋がって初めて「暮らし」が成立するという発想から生まれたものです。えがおさんさんは、各家庭ごとに最適な支援を提供し、医療的なケアの枠を超えて、さまざまな面で家族を支える存在であり続けています。
活動が広がる一方で、訪問看護制度はまだ制度的な見直しが必要な部分がたくさんあります。特に訪問時間が短く制限されている中で、えがおさんさんは利用者のニーズに応え、長時間の訪問や外出支援にも取り組んでいます。
成長に合わせて、段階的に必要な支援を行うことで、重症心身障がい児との信頼関係が築かれ、彼らの生活はさらに豊かなものになっていくのです。看護師は「介護職」としても活動し、様々な制度を活用しながら、家族全体を支える支援が実現できる環境を作り上げています。
このような「看護福祉士」の視点を大切にしながら、私たちの活動は進化していきました。看護と福祉の一体化は、支援を受ける側と支援する側の両方にとって理想的な状態を生み出しています。一緒に生活を支えることで、子どもたちが地域活動に参加したり、友達と遊んだりする、何気ない日常が育まれています。
そして、えがおさんさんのもう一つの特徴は、スタッフ同士の絆の強さです。「〇〇ちゃんファンクラブ」のような言葉が自然に生まれる環境では、チーム一丸となって子どもたちの笑顔を作り出そうとする気持ちが育まれています。支援者が笑顔でいることが、利用者の笑顔にもつながります。これが、30年間の活動を通じて蓄積された財産です。
今後のえがおさんさんは、地域社会と子どもたちの未来を見据え、「笑顔の地域社会」を目指し続けます。制度の隙間を埋めるために、私たちは今後も地域のニーズに合った支援を展開し、新たな人材育成にも取り組んでいくでしょう。次世代への教育や研修を強化し、より多くの子どもたちが自宅で安心して過ごせる社会を実現するための活動を続けていくことを、私たちの使命として受け止めています。