ダム再開発におけるBIM/CIM活用と3次元流体解析技術の最前線

近年、気候変動の影響により、異常な豪雨や渇水が増え、治水・利水の重要性が高まっています。このような状況に対応するため、ダムの再開発が全国的に進められていますが、既存ダムの機能を保ちながら新たな設備を構築することは、高度な技術と詳細な分析が求められる困難なプロジェクトです。特に、岐阜県加茂郡八百津町と可児郡御嵩町に位置する新丸山ダムの再建設工事では、株式会社大林組、株式会社日立パワーソリューションズ、株式会社日立製作所が協力し、BIM/CIM（Building Information Modeling/Construction Information Modeling）を活用して、先進的な3次元流体解析技術を実施しました。

1. 背景と課題

ダムの改良工事では、周辺環境やダム本体への影響を事前に分析し、工程を緻密に設計する必要があります。これまでの工法では、模型実験による水の流れのシミュレーションで試行錯誤を繰り返していましたが、現地状況の変化に快く対応するのが難しく、しばしば不具合が生じていました。そこで、BIM/CIMを用いたデータ解析技術に注目が集まりました。これにより、工事進捗に応じた現地の状況をリアルタイムで把握し、設計時に迅速にシミュレーションを行えるメリットがあります。

2. 新丸山ダムプロジェクト

新丸山ダムの再開発は、既存ダムの洪水調節機能を強化し、発電能力を向上させるための重要な取り組みです。従来の方法と異なり、新設するダムは既存ダムの一部と重なり合う設計のため、技術的に高難易度のプロジェクトです。各社はBIM/CIMをフル活用し、最新の現地データをもとに3次元流体解析を行い、放流状況を高精度でデジタルツイン化しました。この手法によって、工事期間が従来の1年からわずか3カ月に短縮され、設計と施工の効率性が飛躍的に向上しました。

3次元流体解析の具体的な取り組み

1. 既存ダムの放流分析：丸山ダムの放流設備をモデル化し、下流の流れを詳細に解析しました。これにより、ダムの洪水時におけるリスクを正確に評価することが可能になりました。これまでの方法では困難だった浸水リスクの予測も、BIM/CIMの導入によって可能となり、細部にわたる流れの動きを可視化しました。

2. 新設ダムの仮排水トンネル解析：仮排水トンネルの設計においても、流れの状況を解析し、ダム施工時の被災リスクを軽減するための手法を確立しました。この新たな技術により、放流時の流れの様子をリアルタイムで把握できるようになり、安全性が高まりました。

3. 将来の展望

今後、大林組は新丸山ダムの建設から得た知見を基に、他のダム再開発プロジェクトにもBIM/CIMを導入し、作業効率の向上と現場管理の高度化を目指します。一方、日立パワーソリューションズと日立製作所は、この技術を基に更なる発展を図り、豪雨や洪水に備えた地域の防災力の強化に貢献します。これにより、安全で持続可能な社会基盤の整備が進むことが期待されています。

このように、BIM/CIMと3次元流体解析技術の導入は、ただ単に工期を短縮するだけでなく、従来の課題を解決し、将来のダム再開発に新たな可能性を提供しています。持続可能なインフラ整備へ向けた一歩が、ここにあります。