高高度無人機を利用した海洋状況把握技術の新たな展望
近年、海洋の安全保障や環境監視への関心が高まる中、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が提案した「経済安全保障重要技術育成プログラム」の一環として、高高度無人機(HAPS)を活用した革新的なプロジェクトが進行しています。
このプロジェクトは、株式会社Space Compass、新明和工業株式会社、株式会社三菱総合研究所の3社が共同で提案したもので、リモートセンシング技術を用いた海洋状況把握システム(MDAシステム)の開発および運航管理技術の実証を目的としています。
HAPSの可能性と特性
HAPS(High Altitude Platform Station)は、地上から約10~50km上空の成層圏を無搭乗で飛行できる無人プラットフォームで、通信機器やリモートセンシング機器を搭載することで、多様な観測を可能にします。この技術の導入により、高解像度かつ長時間の映像撮影が実現し、漁業や養殖業のサポート、密漁対策、船舶の運航状況把握、さらには災害対策など、幅広い分野でのユースケースが見込まれています。
プロジェクトの具体的内容
本プロジェクトは2024年から2028年にかけて実施されます。主なタスクは次の通りです。
1.
技術・システムの開発
HAPS特性に適したセンシング技術やデータ解析システム、運航管理システムの設計及び構築。
2.
実証実験
成層圏における実証環境を2028年度に計画しています。
各社の役割分担
- - 株式会社Space Compass は、プロジェクト全体の管理及びMDAシステムの全体設計と構築を担当。
- - 新明和工業株式会社 は、HAPSの設計・製造を行い、成層圏での実証環境を構築します。
- - 株式会社三菱総合研究所 は、HAPSの運航管理システムを設計・構築します。
また、このプロジェクトには、複数の大学や技術企業も置かれ、様々な専門知識が集結しています。
産業界への影響
このプロジェクトは、国の経済安全保障の一環としても注目されており、社会のあらゆる側面において海洋状況把握の技術を向上させることが期待されています。また、宇宙データセンターや通信基盤を構築することで、持続可能な社会の実現にも寄与するでしょう。
会社概要
- - 株式会社Space Compassは、NTTとスカパーJSATが設立した合弁企業で、宇宙データに基づいたサービスを構築しています。
- - 新明和工業株式会社は、航空機製造に長年の歴史を持ち、最近では無人飛行艇に関する技術開発を手掛けています。
- - 株式会社三菱総合研究所は、幅広いシンクタンクとして、特に次世代の航空モビリティと通信技術に取り組んでいます。
このプロジェクトは、経済安全保障と持続可能な社会の実現に向けて、新たな一歩を踏み出すものです。今後の進展に期待が寄せられています。