福井県坂井市、龍翔博物館では現在特別展「文明開化の華~龍翔小学校とエッセル堤~」が開催されています。この展覧会の目玉は、明治時代に三国に存在していた擬洋風建築の一つである「中利の三階建て」です。今回の特別展の開催に伴って、この建物が初めて大々的に取り上げられました。
擬洋風建築とは、明治前期に日本の大工たちが洋館に影響を受けて造り出した建物であり、全国各地で見られるようになりました。坂井市に残る「龍翔小学校」はその一例で、地域の象徴とされています。五層八角形のデザインが特徴的で、現在の博物館の外観のモデルとなったことでも知られています。
しかし、今回の展覧会では、同時期に築かれたもう一つの擬洋風建築が紹介されているのです。この建物は豪商「橋本利助」によって建てられ、龍翔小学校よりも早くから存在していました。その豪華な外観と、当時の建築技術を駆使した和洋折衷のデザインは、多くの来場者の関心を引いています。
河川の眺望を楽しむために設けられた三階建ての展望室を持ち、アーチ型の瓦屋根と豪華な装飾が施された橋本家の邸宅は、かつては地元でもほとんど知られていませんでした。この特別展で初めてその存在が広く知られることとなり、坂井市における文明開化の歴史を振り返る場となっています。
展覧会では、明治時代の建築を比較するためのパネルも展示されており、「龍翔小学校」と「中利の三階建て」の両方が確認できる遠景写真が特に重宝されています。また、当時の貴重な文献資料や写真も多数展示され、橋本家がいかに当時の文化と経済に貢献していたかを示すエピソードが紹介されています。
特に興味深いのは、橋本家が建築時に使用した材料や技術、また日本の近代建築がどのように進化してきたのかに焦点を当てた部分です。中浜屋利助の子孫が保管していたアルバムから掘り起こされた写真は、来場者に深い感動を与えています。
また、この特別展では、エッシャー直筆の「三国港突堤」に関する図面も展示されています。オランダ出身の技師が描いた5点の図面は、突堤の建設プロセスを具体的に理解する手助けをしてくれます。これらの図面は、今まで公開されていなかったものだけに、訪れた人々に新たな知識と魅力を提供しています。
特別展「文明開化の華」は、今後も坂井市龍翔博物館で続きます。展示期間は12月7日までで、来館することで豊かな歴史的背景を感じることができるでしょう。
さらに、関連イベントとして、講演会が行われる予定です。11月16日(日)には、「文明開化の光と影」と題した講演が、また12月7日(日)には「龍翔小学校にまつわるエトセトラ」と題して別の講演が開かれます。この機会にぜひ訪問し、近代日本の歴史に触れてみてはいかがでしょうか。
詳しい情報や問い合わせは、坂井市龍翔博物館までご連絡ください。
・日付:12月7日まで
・開館時間:9時~17時
・定休日:水曜日
・入場料:大人700円(高校生以下無料)
・電話番号:0776-82-5666
こうした特別展の存在は、私たちが過去を見つめ直し、新たな知識を得る貴重な機会を提供しています。近代建築の魅力とその歴史的背景を再評価するためにも、ぜひお立ち寄りください。