DNPの新たな挑戦:スポンサーシッププログラムの全貌
大日本印刷株式会社(DNP)は、企業の競争力を向上させるために、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進を重要な経営戦略の一環として位置づけています。2021年度にスタートした「スポンサーシッププログラム」はその一例であり、特に経営層の多様性を高めることを目的としています。2024年度には、社内の執行役員以上の全経営陣が参加し、その取り組みに670時間以上を費やしました。このプログラムは、DNPが2030年までに役員の女性比率を30%に引き上げることを目指す中で、重要な役割を果たしています。
なぜ「スポンサーシッププログラム」なのか?
DNPがこのプログラムを導入した背景には、企業の意思決定層における多様性を高める必要がありました。これを実現するためには、女性の上級管理職登用が不可欠です。プログラム開始時には、参加した経営陣と参加していない経営陣の間で、女性登用に関する認識に乖離があることが判明しました。参加した経営陣は、女性に対して「意識的な育成」が行われていないことに気づき、スポンサーシップの重要性を認識しました。一方で、参加していない経営陣は仕事と家庭の両立についての配慮を強調しました。
このため、社長のリーダーシップの元、経営陣全員が女性の育成責任を担う方針が定まり、このプログラムが実施されたのです。
プログラムの目的と内容
このプログラムには、主に以下の2つの目的があります。第一に、次世代の女性経営リーダーを育成し、社内での登用を進めることによって、意思決定層の多様性を維持したまま企業の競争力を強化しようとしています。第二に、多様な人材が活躍できる文化を育むために、対象となる女性と彼女たちを支援するスポンサー、メンター間での相互学習を促進し、継続的な育成環境を整えようとしています。
プログラムの特長
1.
全経営陣の関与: 社長を筆頭に全財務陣が積極的に参加することで、プログラムの効果を最大化します。
2.
対象女性を2名の経営陣が支援: それぞれ異なる役職の経営陣が「スポンサー」と「メンター」として、月に一度の面談を通じて彼女たちの成長を後押しします。
3.
育成計画の具体化: スポンサーが人事権を有することで、対象女性は具体的な成長目標が設定でき、経営リーダーに必要な挑戦を含む体験を提供されます。
4.
成果の共有: プログラムの成果を発表する機会が設けられ、経営陣間での意見交換や知見の共有を促進します。
今後の展望
プログラムに参加した経営陣からは「スポンサーシッププログラムがなければ、対象者の潜在能力に気づかなかった」といった声も上がっています。このようなフィードバックは、多様な人材を育成する重要性を再認識させ、育成環境を作る機運を高めています。また、対象女性の参加者は、経営陣との定期的な面談によって新たな視点を得て、自身の成長を実感するようになっています。
DNPは今後も2030年までに役員の女性比率を30%に引き上げる目標を掲げ、引き続きD&Iの推進に力を入れます。人への投資を積極的に行い、人的創造性を高めることで、企業価値の向上につなげていく方針です。これにより、持続可能な経営の実現を目指していきます。