ストレスがもたらす長期的な不安:ラット実験で脳の変化が明らかに
東北大学加齢医学研究所の領家梨恵非常勤講師(新潟医療福祉大学助教)らの研究グループは、ラットを用いた実験で、複数のストレスが長期的な不安行動を引き起こす脳内メカニズムを解明しました。
研究では、複数のストレスを経験したラットが、ストレスを受けないラットと比べて、以前にストレスを経験した場所で長時間動けなくなる(フリーズする)状態が続くことを確認しました。さらに、脳形態解析を行った結果、不安反応が強いラットほど、扁桃体-海馬領域の体積が減少していることが明らかになりました。
この研究成果は、ストレスによって引き起こされる持続的な不安と扁桃体-海馬領域の関連性を示唆するものであり、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の治療法開発に役立つ可能性を秘めています。
PTSD治療への期待
PTSDは、トラウマ的な出来事によって引き起こされる精神疾患であり、持続的な不安や恐怖、悪夢、フラッシュバックなどの症状が特徴です。現在、PTSDの治療法として、薬物療法や心理療法などが用いられていますが、効果が不十分な場合も多いのが現状です。
今回の研究では、複数のストレスが扁桃体-海馬領域の体積減少を引き起こし、長期的な不安行動を促進することを明らかにしました。このことから、扁桃体-海馬領域をターゲットとした新しい治療法が開発できる可能性が期待されます。
今後の展開
研究グループは、今後、ストレスによる脳の変化をさらに詳しく調べることで、PTSDの予防や治療に役立つ新たな知見を得たいと考えています。また、ラットを用いた実験結果をヒトに適用できるよう、臨床研究を進めていく予定です。
研究の詳細
研究機関: 東北大学加齢医学研究所
研究者: 領家梨恵 非常勤講師(新潟医療福祉大学助教)
掲載誌: Biological Psychiatry: Global Open Science
DOI: 10.1016/j.bpsgos.2024.100334
まとめ
今回の研究は、複数のストレスが長期的な不安行動を引き起こす脳内メカニズムを解明した重要な成果です。この研究成果は、PTSDの治療法開発に新たな道を切り開く可能性を秘めており、今後の展開が期待されます。