大阪大学とTISが新たな量子プログラミングソフト『Tranqu』を共同開発

量子コンピュータの新時代を切り開く『Tranqu』の開発

大阪大学とTISインテックグループが共同で開発した量子プログラミングの変換・最適化ソフトウェア『Tranqu』は、量子コンピュータの利用を一層進化させる新たな一歩として位置付けられています。これにより、ユーザーは特定のベンダーに依存することなく、最適なトランスパイラを選択する自由を手に入れることができます。

量子プログラムの変換と最適化

『Tranqu』は、量子プログラムを量子チップ上で実行可能な形に変換するトランスパイラとして機能します。量子プログラムは、量子チップが理解できる形に翻訳され、さらにプログラムの最適化が行われます。このプロセスでは、量子チップの構造や基本命令を考慮し、可能な限りノイズを減らすための工夫が施されます。

ベンダー・ロックインの課題解決

現在、量子コンピュータのクラウドサービスを提供する多くのベンダーは、自社のトランスパイラに依存させる仕組みを採用しています。これがいわゆるベンダー・ロックインを生み出し、ユーザーはサービス選択の自由を失っています。『Tranqu』の開発は、この課題を解消することを目指しています。具体的には、ユーザーが特定のベンダーに縛られることなく、必要に応じて最適なトランスパイラを選べる環境を提供します。

開発の背景と重要性

量子プログラムを実行する際、トランスパイラの選択が実行結果に大きく影響を与えます。このため、異なるトランスパイラを試すことで、より高精度の結果が得られる可能性があります。大阪大学が運営する量子クラウドでは、自動トランスパイル機能がありますが、これまでのトランスパイラは一種類のみでした。そのため、多様な選択肢を持つことが重要であり、そのニーズに応えるために『Tranqu』が開発されました。

自動化されたトランスパイル処理

『Tranqu』の利用フローはシンプルです。ユーザーは普段使い慣れた量子プログラミング環境を介してプログラムを作成し、選択したトランスパイラに対応する形式に自動的に変換されます。その後、トランスパイラが変換処理を実行し、最終的にはプログラムの変化に関する重要な指標がユーザーに提供されます。これにより、量子プログラムの運用が格段に効率的になります。

今後の展望

本ソフトウェアは、オープンソースとして公開されており、研究者たちにも利便性を提供します。今後は、より多くのトランスパイラや量子プログラム形式のサポートを拡充し、大阪大学の量子クラウドでも『Tranqu』の導入が予定されています。これにより、ユーザーは幅広い選択肢の中から最適なトランスパイラを選び、量子コンピューティングの可能性を最大限に引き出すことが期待されています。