KDDIとJALは、埼玉県秩父市で、1名の操縦者が3機のドローンを遠隔操作で同時運航する実証実験に成功しました。この実験は、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が推進する「次世代空モビリティの社会実装に向けた実現プロジェクト(ReAMoプロジェクト)」の一環として実施されました。
実験では、KDDIとKDDIスマートドローンが共同開発した運航管理システムに、JALの航空事業で培われた安全運航のノウハウが組み込まれ、複数機の安全な遠隔操作を実現しました。操縦者は東京都内から、秩父市の吉田地区にある複数のポイント間をドローン3機で同時に飛行させ、防災用品や食品を配送することに成功しました。
この実証実験では、レベル3.5飛行(注1)が採用されました。これは、ドローンの搭載カメラで歩行者を検知するなど、一定の条件を満たせば地上の補助者や立ち入り管理措置が不要となる飛行方法です。
KDDIとJALは、今回の実証実験で得られた知見を活かし、1対多運航の実用化に向けた取り組みを加速させていきます。特に、運航要件の検討や運航管理システムの開発、ビジネスモデルの確立などに注力していく予定です。また、1対多運航に関するルールづくりを推進することで、ドローンの社会実装を安全かつ効率的に進めていくことを目指しています。
背景としては、物流の2024年問題や労働力不足、社会インフラの老朽化、地域の過疎化や高齢化といった社会課題の解決に、1対多運航が期待されています。
本実証実験では、1名の操縦者が複数機を安全に遠隔操作できる体制づくりを目指し、運航管理システムとオペレーション・プロシージャー(注2)が検討・開発されました。限られた情報に基づいて的確な状況把握・判断が必要となる遠隔操作においては、運航管理システムを通じて、機体の運航状況や気象状況をリアルタイムに監視し、必要に応じて手動操作を行うなど、高度なドローン運航管理が求められます。
本実証実験では、運航管理システムの表示機能の改善・向上とともに、イレギュラー時も含めたオペレーション・プロシージャーを構築し、1名の操縦者が遠隔自動操縦にてドローン3機体を安全に運航の上、防災用品・食品の同時配送が可能なことを検証しました。
今回の実証実験は、ドローンの1対多運航の実用化に向けた大きな一歩となりました。KDDIとJALは、今後も連携して、ドローン技術の進化と社会実装を推進していく予定です。
(注1)レベル3.5飛行は、2023年12月に航空法改正により新設された飛行制度です。条件を満たすことで、立入管理措置が不要になります。
(注2)オペレーション・プロシージャーとは、特定の作業を行うための手順やルールを定めたものです。作業の標準化を図り、一貫性や効率性を向上させることができます。