近年、結晶科学の分野において新たな発見が相次いでおりますが、特に興味深い研究が熊本大学大学院先端科学研究部の猪股雄介助教を中心とする研究グループによって行われました。この研究では、アルコール類を添加することによって、キラル無機結晶の一種である三塩化銅セシウム (CsCuCl3) の光学分割が可能であることが明らかになりました。これまで、無機結晶におけるキラルな性質についての研究はあまり進んでいませんでしたが、この発見により、新たな視点が提供されることとなりました。
具体的には、研究チームはアルコールの添加によって右手型と左手型の三塩化銅セシウムがそれぞれ分かれて結晶化する様子を観察しました。これは、アルコールの影響によって結晶成長の方向が異なることが最も大きな要因として考えられています。これまでの研究において、キラル無機結晶の生成には限界があったため、本発見は新たな足掛かりとなることでしょう。
研究の概要説明として、まず三塩化銅セシウムとは何かをご紹介します。これはセシウム、銅、塩化物イオンからなるイオン結晶で、結晶構造にはらせん軸を持ち、水晶と同様に右手型と左手型の結晶が存在します。また、光学分割とは、物質を純粋な右手系と左手系に分ける操作を指し、1848年にルイ・パスツールが発見した酒石酸ナトリウムアンモニウムの例が特に有名です。この新たな手法は、無機結晶が持つ特性を生かし、今後の研究に新たな可能性を切り開くものと期待されています。
さらに、本研究成果は令和7年12月24日付で科学雑誌「Crystal Growth and Design」に掲載され、多くの研究者から注目を集めております。今後この手法が他のキラル無機結晶に応用できるなら、さらなる進展が見込まれることでしょう。研究チームは、今後もキラルな無機結晶の生成方法に関する研究を続けていくとのことです。次世代の材料開発にも寄与する可能性が高く、期待がかかります。
この研究はJST創発的研究支援事業 (JPMJFR223D) の支援を受けて実施されており、研究者たちは今後の成果を通じて、より一層の発展を目指していくことでしょう。皆さんもぜひこの分野の研究にご注目ください。将来、私たちの生活に影響を及ぼすような革命的な発見があるかもしれません。これからの研究の進展に期待が高まります。詳しい論文情報は以下の通りです。
論文名:Solvent and Achiral Crystalline Phase-Induced Chiral Resolution of CsCuCl3
著者:Yusuke Inomata*, Suwan Yamada, Tetsuya Kida
掲載誌:Crystal Growth and Design
doi:10.1021/acs.cgd.5c01350
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今後もこの研究に関するさらなる情報をお届けしていきますので、楽しみにしていてください。