エンプロイーサクセスの現状と課題
近年、企業におけるエンプロイーサクセスの重要性が増していますが、実際の推進状況には課題が多いことが、株式会社月刊総務による最新の調査結果から明らかになりました。全国の総務担当者を対象に実施されたこの調査では、124名からの回答をもとに、エンプロイーサクセスに対する関心や取り組み状況が浮き彫りになりました。
エンプロイーサクセスとは?
エンプロイーサクセスは、企業が持続的に成長するために従業員が能力を最大限に発揮できるように支援する概念です。今回の調査によると、全体の約半数の総務担当者がこの概念を意識しているものの、実際に推進しているのは約34.7%にとどまることが示されました。この数値は、業界全体でのエンプロイーサクセスの浸透に向けた道のりがまだ長いことを示しています。
認知度の低さが課題
調査結果からは、総務の55.6%が「エンプロイーサクセス」という言葉を知らないと回答しており、認知度の低さが顕著です。53.2%の総務はエンプロイーサクセスを意識しているものの、具体的な施策が行われている企業は限られていることが分かります。
エンプロイーサクセスの推進理由
調査では、エンプロイーサクセスを推進する理由として「離職率の低下」が79.1%で最も多く、「エンゲージメントの向上」が69.8%、「優秀な人材の確保」が60.5%に上りました。企業側は、従業員の定着とモチベーション向上を狙っていることが明らかです。
効果的な施策とは?
実施している施策としては、「福利厚生の充実」が72.1%で最も多く、次いで「職場環境の整備」(69.8%)や「健康管理支援」「ワーク・ライフ・バランスの推進」が各62.8%となっています。また、効果があった施策でも「福利厚生の充実」が51.2%で推進されており、依然として福利厚生が従業員の働きやすさに大きく寄与していることが分かります。
課題に直面する推進状況
一方で、エンプロイーサクセス推進の課題として最も多く挙げられるのは「施策の効果測定の難しさ」(60.5%)です。これにより、推進した施策が効果的かどうか判断できず、リソースの無駄との懸念も寄せられています。また、「管理職の理解不足」や「リソースの不足」も課題に上がっています。
キャリアの選択肢の拡大は
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調査では、キャリアの選択肢が広がったと感じているのは約3割に留まる結果となりました。社内公募制度の活用や多様なキャリアパスの準備が進む一方、コロナ後に従来の勤務形態に戻る傾向があり、選択肢が限定される恐れも指摘されています。特に、経営と現場の考え方の乖離が問題となっていることも明らかになりました。
自律的な組織を目指すために
自律的な組織の実現に向けた取り組みとしては、「社内コミュニケーションの促進」が52.4%でトップに立ち、フィードバックを重視する評価制度や各部署の意思決定権の拡大も求められています。これらの取り組みがなければ、エンプロイーサクセスを続ける企業は難しいと言えるでしょう。
今後の展望
調査結果からは、エンプロイーサクセスに対する意識は高まりつつあるものの、実際の推進には多くの課題が残っていることが示されました。今後は、管理職層の理解を深めるための具体的な取り組みや、データを活用して施策の効果を測定する仕組みの構築が求められます。企業の総務は、エンプロイーサクセスの視点から、従業員の働きがいを向上させる必要があるでしょう。
以上の調査結果は、今後の企業の成長戦略における重要な指針となることでしょう。