流行語の実態と社会の分断
近年、日本の流行語大賞にノミネートされる言葉がどのように受け入れられているのか、その実態が不明瞭な状況が続いています。そこで、株式会社応用社会心理学研究所(以下、ASPECT)は、2025年11月に日本人1000人を対象にした調査を実施し、その結果を発表しました。この調査は、流行語大賞にノミネートされた30語に対する認知度や流行感についてのデータを収集することを目的としています。
調査結果の概要
流行語を認知している人の割合
調査結果によると、ノミネートされた30語の中で「流行った」と感じている言葉はわずか9語でした。その中でも特に「物価高」(90%)や「緊急銃猟/クマ被害」(85.8%)が高い割合を示しています。一方で、約35%の参加者が「知らない」と回答したことからも、流行語の情報が浸透していないことを示唆しています。
明らかになった流行感のギャップ
興味深いのは「知っているが使わない」という状況です。30語中8語においては、知名度と流行感の間に20%以上のギャップが存在しました。たとえば、薬膳に関しては52%のギャップが見つかり、多くの人が知識としては知っていても、実生活で使用することは少ないということが浮き彫りとなりました。また、流行語に対する自身の使用度との間でも同様のギャップが確認されました。
コミュニティによる流行の差異
調査は性別、世代、メディア利用の観点からも分析されました。その結果、流行語の感覚には大きなバリエーションがあることが明らかになりました。例えば、あるフレーズは特定の年代や性別で非常に広まっていても、他のコミュニティではほとんど知られていないという現象が見られました。つまり、流行語は特定の界隈に閉じた現象であることが多いのです。
年間大賞の行方とその背景
2025年度の流行語大賞として発表された「働いて働いて働いて働いて働いてまいります/女性首相」は、特に女性の間で高い評価を受けていました。男性の中でも20代の若者たちがこのフレーズに魅力を感じている傾向が見られ、世代間の意識の違いを如実に示しています。
現代社会への影響
この調査から浮かび上がってくるのは、コミュニティが多様化する現代社会において、流行語がより特定の情報源や、固有の考え方を共有する集まりの中で生まれているということです。これは、流行語だけでなく、ヒット商品や世代間の対話が難しくなっている社会的な課題にも関連しています。流行語は単なる言葉の流行ではなく、私たちがどのようにコミュニティを形成し、どのような情報をどうやって受け取っているのかを映し出す鏡となっています。
本調査の詳細はASPECTの公式ページで確認できます。社会心理学の視点から、流行語の意味を再考する重要な機会となることでしょう。