自動化された電源回路設計の未来
近年、電気自動車(EV)やデータセンターなど、さまざまな分野で高周波電源回路の需要が急増しています。これを受け、千葉大学大学院情報学研究院の関屋大雄教授と東京理科大学の朱聞起助教らからなる研究チームが、AIと機械学習を駆使して自動設計する革新的な手法を発表しました。これは、単なる電気回路設計にとどまらず、半導体の熱的および電気的特性、コイルやトランスの磁気特性を統合的に扱った「マルチフィジックス設計」の自動化を実現した点に大きな特徴があります。
1. 研究の背景
電源回路はEV、太陽光発電、サーバーなどの機器に不可欠であり、電圧を効率よく変換する役割を果たします。これらの技術が進化する中、電源回路にも「より小型化」と「より高効率化」という二つの要求が高まっています。特に、高周波化により小型化は可能になりますが、半導体やコイルの損失増大が伴い、効率との両立が難しいのが現実です。この二つの要求のトレードオフを解決するために、研究チームはそれぞれの要素を統合した数値モデルを活用した設計手法を模索しました。
2. 研究の成果
研究チームは、電気、磁気、熱という異なる物理現象を統合して評価し、複数の設計目標に対応できる「多目的最適化」技術を導入しました。この手法を代表的な電源回路であるLLC共振型コンバータに適用し、1 kW級・1 MHzの試作回路において、最高96.1%の電力変換効率を達成。さらに、小型化を重視した設計プロセスでは、部品の体積を約41%削減できる成果も確認されており、効率を維持しつつコンパクトな設計が実現できることが明らかとなりました。
3. 今後の展望
今回の取り組みはLLC共振型コンバータに限らず、様々な電力変換回路へも展開が可能です。将来的には、より詳細な物理モデルの追加や実測データの統合を行うことで、さらなるマルチフィジックス設計の高度化を目指します。また、最適化によって得られた多数の設計結果を蓄積し、次世代のデータ駆動型設計における学習材料として活用することで、設計プロセスをさらにスピードアップする見込みです。
用語解説
- - 機械学習: データからパターンを学び、新たなデータに対して予測を行う技術。
- - マルチフィジックス設計: 電気、磁気、熱などの物理現象を統合して設計する方法です。
- - LLC共振型コンバータ: 高効率に電圧を変換するための電源回路。
研究プロジェクトについて
本研究は、文部科学省INNOPEL事業およびCOPELNIX事業の支援を受けて進められました。
参考論文情報
- - タイトル: Metaheuristic-Based Optimization-Driven Design of MHz LLC Resonant Converters Considering Multiphysics and Multiple Objectives
- - 著者: Yinchen Xie, Wenqi Zhu, Yutaro Komiyama ほか
- - 雑誌名: IEEE Transactions on Power Electronics
- - DOI: 10.1109/TPEL.2026.3722304
今後のニューエネルギー革命に向け、さらに多くの期待が寄せられます。