全国の空き家を活用した防災対策の新提言
2025年6月4日、東京都港区に本拠を置く一般社団法人新経済連盟が注目の提言を公表しました。タイトルは「地域・国家の防災体制・レジリエンスの強化に関する提言~空き家の有効活用等~」です。この提言の核心は、全国に広がる空き家を戦略的に活用し、防災力や地域の持続可能性を向上させることにあるといいます。
1. 基本的な考え方
提言の始まりは、「負動産」として扱われがちな空き家を「超短期間」でアップサイクルし、平時と災害時の何れにも利用できる「フェイズフリー」な拠点として再生させるという新たな視点から出発します。このプロジェクトにより、防災やレジリエンスの向上、国土の強靭化、地方創生、さらには観光促進へとつながる効果が期待されています。
2. 現状との課題
では、現在の状況はどうでしょうか。2023年には全国で約900万戸の空き家があるとされ、2043年までにはその数が約2000万戸に達すると予測されています。しかし、こうした資源の有効活用が進まないことが地域における重要な課題となっています。この問題を解決するためには、空き家を可視化し、施工可能なリフォーム技術を迅速に導入することが不可欠です。また、近年の頻発する自然災害に対応するには、単に被災者の収容施設を増やすだけでは不十分であり、空き家を活用していくことが求められます。
3. 具体的な要望
提言では、以下のような具体的な措置を求めています。
(1)耐震・断熱リフォームへの補助金
全国統一のルールの下で、空き家の耐震や断熱リフォームに対する補助金を付与し、より多くの住宅が安全で快適なものになるよう支援します。
(2)空き家の移動型施設利用
被災者向けのキャパシティとしての空き家やトレーラーハウス等を活用するため、事前登録制度を構築し、スムーズな連携体制を整えます。
(3)税制上の全国統一ルール
トレーラーハウス等の税制上の取り扱いについても、全国で統一されたルールの策定を求めています。
(4)空き家データの整備
空き家の有効活用を実現するために、関連データの連携と結合の仕組みを構築することが重要です。
まとめ
この提言は、地域社会が持つポテンシャルを引き出し、災害に強い社会の構築に向けての第一歩です。空き家をただの負の遺産として捉えるのではなく、地域経済や防災力を高めるための資源として見る視点が求められます。また、国の支援やルール整備が、このプロジェクトを後押しすることが期待されています。
この提言を通じて、全国の自治体や市民が共に考え、協力して問題解決へと導いていく姿勢が一層重要になるでしょう。