プラスチックリサイクルの新たな未来
株式会社レゾナックとマイクロ波化学株式会社が共同で進めるプロジェクトが、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業」に採択され、2025年3月よりケミカルリサイクル技術の開発に本格的に取り組むことになりました。このプロジェクトは、2022年からの共同開発をさらに拡張し、化石資源に頼らないプラスチック原料製造を目指しています。
現在、世界的に資源循環社会やカーボンニュートラルの実現が求められる中で、プラスチックのリサイクル手法が注目されています。従来のプラスチックは化石資源から作られ、その製造や廃棄時に多くのCO2を排出しています。そこで必要とされるのが、使用済みプラスチックを再資源化し、基礎化学品に戻すケミカルリサイクル技術です。
従来のリサイクルからの進化
通常、プラスチックの選別・分離は非常に手間がかかり、コストもかさむため、大量に発生する混合プラスチックをそのまま熱分解して基礎化学品に戻す技術が求められています。レゾナックとマイクロ波化学は、この混合プラスチックを効率よく再生するための新しいアプローチを模索してきました。具体的には、マイクロ波を用いた熱分解技術を使用し、高い収率で基礎化学品を製造することを目指します。
マイクロ波加熱技術の活用
レゾナックとマイクロ波化学は、2022年から使用済みプラスチックにマイクロ波を照射し、分解する研究を進めてきました。マイクロ波は、電子レンジで使用される技術で、対象物にエネルギーを集中させ、高効率に化学反応を促進します。この技術を利用することで、実際の混合プラスチックを基礎化学品に直接変換するシステムを開発します。
本プロジェクトでは、混合プラスチックを熱分解し、60wt%以上の有用基礎化学品の収率を実現することを目標としています。また、CO2の排出量を0.8 kg-CO2/kg-オレフィン以下に抑える技術の開発にも取り組んでいます。
未来を見据えた技術開発
具体的なスケジュールとしては、まずラボスケールおよびベンチスケールでの分解プロセスの最適化を行い、その後パイロットスケールで実証実験を行います。また、商業化に向けての課題抽出や対策も並行して進め、実用性のある技術を確立していきます。
これまでの実験では、ポリエチレンやポリプロピレンなどの三元系で80wt%、ポリエチレンテレフタラートとポリ塩化ビニルを加えた五元系では70wt%の収率を実現しています。これからさらなるスケールアップを図り、実際のリサイクルプロセスに対応できる技術を確立することを目指します。
レゾナックとマイクロ波化学の目標
レゾナックは、化石資源に依存しないプラスチック原料の製造技術を確立し、これを社会に実装することでCO2排出の大幅な削減に貢献するとしています。両社の共通の目標は、持続可能な社会の実現に向けた技術革新を追求し、未来の地球環境を守ることです。
このプロジェクトが成功すれば、プラスチック問題に一石を投じる重要な進展となるでしょう。私たちの未来のために、これからも注目が必要です。