固体原子核時計の進展
2024-07-29 01:21:16

トリウム229のアイソマー制御に成功、固体原子核時計の実現が進展

トリウム229のアイソマー制御がもたらす新たな可能性



岡山大学と高輝度光科学研究センター、京都大学、理化学研究所、大阪大学の研究チームが、固体結晶中のトリウム229原子核のアイソマー状態をX線で制御する新技術を確立しました。これにより、超高精度の「固体原子核時計」の実現に向けて大きな一歩を踏み出したといえるでしょう。

アイソマー状態の発見とその特徴


トリウム229は、最小の励起エネルギー(8.4電子ボルト)を持ち、アイソマー状態と呼ばれる特異な状態を持った原子核です。このアイソマー状態は、非常に高い精度でレーザーを使って励起できる特性を有しており、新しい測位技術や基礎物理研究に利用されることが期待されています。

研究の進展と新たな発見


研究チームは、固体結晶中のトリウム229を高輝度X線で励起し、アイソマー状態から基底状態への遷移時に放出される光を観測することに成功しました。特に注目すべきは、X線の照射が突然に脱励起を早め、アイソマー状態の寿命を短縮させる「クエンチ現象」を初めて観測したことです。このことは、外部からの制御により原子核の挙動を自在に変えることが可能であることを示しています。

固体原子核時計の応用


アイソマー状態の特性を利用することで、固体内でも高精度な計測が行える「固体原子核時計」が実現する見込みです。この時計は、従来の時計技術に比べて環境による影響が少なく、より安定した時間計測が可能になります。これにより、測位システム、測地学など多岐にわたる応用が期待されています。特に、基礎物理研究においては、優れたプラットフォームとして重要な役割を果たすでしょう。

結論と今後の展望


今回の研究成果は、日本とオーストリアの共同研究チームが、最先端技術を持ち寄って10年をかけて達成したものです。原子核時計に関する重要な成果が続々と発表される中、本研究が新たな原子核時計の幕開けとなることを期待しています。今後も連携を強化し、世界初の原子核時計の実現に向けて努力していく所存です。

この研究の詳細は、2024年7月に「Nature Communications」紙に掲載されており、その内容は科学界において広く注目されています。さらなる研究の進展と実用化に向けた取り組みが、今後の科学発展に寄与することを願っています。


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