チオキサントン合成法の革新
2025-02-03 10:37:24

新たな短工程でのチオキサントン合成法が創薬科学に期待を寄せる

新たなチオキサントン合成法の確立



東京理科大学の研究グループが、チオキサントン類を短い工程で合成する新たな方法を発見しました。この成果は、創薬科学や材料化学などの分野において、多大な影響を及ぼすことが期待されています。

研究の背景と目的


チオキサントンは、有機硫黄化合物のひとつで、紫外線硬化剤や有機半導体としての用途があり、その重要性から多様な合成法が提案されています。しかしながら、官能基を持つチオキサントンやその誘導体の合成は、依然として非常に困難でした。 そこで、東京理科大学の吉田優准教授を中心とする研究グループは、アライン中間体とチオ尿素との新しい反応を利用することにより、効率的な合成法を実現しました。

新しい合成法の概要


研究チームは、アライン中間体という短寿命の化学種とチオ尿素を反応させることで、チオキサントンを生成する新しい手法を開発しました。具体的には、炭酸セシウムと18-クラウン-6を加えた条件下で、o-シリルアリールトリフラートから生成したアライン中間体がチオ尿素と反応し、その後の加水分解を経て目的のチオキサントンが得られる過程を解明しました。

この手法により、官能基を持つo-シリルアリールトリフラートを出発物質として利用すると、さまざまな官能基を有するチオキサントン誘導体が合成可能であることが示されました。このような手法が実現することで、合成されるチオキサントンは多様な機能や特性を有することが可能となり、広範な応用が見込まれています。

反応機構の詳細


研究チームは、アライン中間体とチオ尿素間の反応機構を詳細に解明しました。この反応は、以下のステップで進行します:

1. o-シリルアリールトリフラートがアライン中間体(中間体I)を生成。
2. 中間体Iとチオ尿素の反応により、4員環(中間体III)が形成される。これが1度目のアライン中間体の挿入となります。
3. 中間体IIIが開環し、チオラート部分を有するアミジニウム中間体(中間体IV)を生成。
4. 中間体IVが再び中間体Iと反応し、イミニウム中間体(中間体VII)を生成。これが2度目のアライン中間体の挿入に当たります。
5. 最後に、中間体VIIの加水分解が起こり、チオキサントンが得られます。

この反応経路によって、さまざまな官能基を持つチオキサントンが合成できるため、応用の幅が広がることが期待されています。

研究成果の意義


吉田准教授は、「チオカルボニル化合物とアラインの反応には未開拓の部分が多く、広範な知見が期待できる。ただし今回の成果により、合成可能となるチオキサントン類のバリエーションが増え、創薬や材料開発における新しいモダリティが提供される」とコメントしています。

この研究成果は、2025年1月9日に国際的な学術誌『Organic Letters』に掲載され、学術界だけでなく産業界からも注目されています。今後、この新しい合成手法が化学分野での進展を促し、より良い未来を築く手助けとなることが期待されます。

最後に


チオキサントン類の新しい合成法の開発は、有機化学、創薬、材料化学などのさまざまな分野において新しい道を開くことでしょう。この研究の進展が、今後の実用化にどのように貢献するのか楽しみです。


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