ファームノートが切り開く新たな酪農の未来
株式会社ファームノートは、北海道帯広市に本社を構える企業で、酪農領域におけるデジタル・トランスフォーメーション(DX)の先駆者として知られています。その中でも特に注目されているのが、乳牛の遺伝子情報を解析するサービス「Farmnote Gene」です。このサービスは、2025年1月の検査分において、日本のゲノム検査市場で圧倒的なシェアを誇ることが明らかになりました。約6,069件の月間検体数のうち、Farmnote Geneは3,000件超を占めており、実に50%を超えるシェアを獲得しています。
「繁殖インデックス」を活用した新たな繁殖基準
Farmnote Geneが持つ革新性の一つは、独自に開発した「繁殖インデックス」です。この指標は、Farmnote Cloudに蓄積された500万回を超える授精データと、遺伝子検査データを基にしており、牛の遺伝的能力を簡潔に把握することを可能にします。これにより、繁殖性に優れた個体を迅速に見つけ出し、データドリブンな戦略を立てることができます。
具体的には、Farmnote Geneでは、異なるニーズに応じた二つのゲノム検査が用意されています。ST Geneticsの「Vision+」は、現場のニーズに直結する飼料効率やロボット適性といった指標を重視し、Zoetisの「クラリファイドプラス」は健康指標に強みを持っています。これにより、農場の改良方針に合った戦略的な後継牛選抜が実声できます。
収益化を促進する新たな繁殖戦略
Farmnote Geneのさらなる強みは、検査結果とFarmnote Cloudとの連携です。「この子を残すべきか?」という5年後の牧場経営に直結した疑問に、科学的な根拠を持ったデータで答えることができます。また、特に緻密なメイティングが、育種改良のスピードと目標を決定する要因となります。精度の高い交配計画を立てることで、育成の過程で発生するコストを最小限に抑えることが期待されます。
たとえば、NM$(ネットメリット)が低い牛には和牛の受精卵を移植し、個体販売による収益化を図る戦略が取られています。これにより、後継牛の選定と個体販売の両立が実現可能になります。
実際の導入事例:那須野牧場
那須野牧場の那須野さんは、Farmnote Geneの導入を行った背景について「数値を見たときの驚き」を語ります。以前は感覚に依存していた繁殖選抜の判断が、データに基づくためより信頼性が増しました。特に、牛一頭のNM$を見たことで、目利きでは分からなかった部分が明らかになり、本当に良い牛が何かを理解できるようになったといいます。
現在、那須野牧場ではNM$600台の牛を中心に繁殖戦略が進められており、必要な頭数の後継牛を残すことで育成コストを削減。年間100頭規模の和牛を販売する新たな収益ルートも確立し、事業も安定化に向かっています。
科学に基づいた未来を目指して
ファームノートは、「Farmnote Gene」を単なる検査ツールとして位置付けるのではなく、牧場の繁殖戦略を支えるプラットフォームとして活用しています。後継牛選抜からメイティング、和牛受精卵の活用までを一貫して支援し、農場経営者がデータに基づいた意思決定を行える環境を提供します。これにより、日本の酪農は、従来の感覚頼りの時代から科学に基づく未来へと進化を遂げています。
ファームノートは、データドリブンな繁殖戦略を業界の新たなスタンダードとして確立し、酪農経営に革新をもたらすでしょう。