医療・介護業界のM&A動向と今後の展望
2023年、株式会社M&A総合研究所は医療・介護業界でのM&A活動に関する新しい調査結果を発表しました。この調査では2018年から2023年までの期間における上場企業のM&A成約件数を集計し、その動向を分析しています。
1. M&A成約件数の増加
調査によると、医療・介護業界におけるM&A成約件数は104件に上り、そのうち同業種間の取引が40件、異業種間の取引が64件となっています。特に「介護・福祉」が61件、「医療サービス」が43件を占めており、この分野のM&A活動はますます活発化しています。2023年には特に異業種間の取引が増加傾向にあり、これが業界全体の変革を促進しています。
2. 介護業界の人材不足とその影響
高齢者の増加に伴い、介護事業への需要は拡大していますが、一方で人材の確保が緊急の課題となっています。介護職の離職率や新たな人材の採用が厳しく、企業は人材確保を目的としたM&Aや業務効率の向上を狙ったM&Aを進めていく必要があるでしょう。2024年には、介護報酬改定がプラス1.59%となる見込みですが、他業種との賃金格差は依然として課題であり、競争が激化することが予想されます。
3. 異業種からの参入の増加
2023年においては、異業種から介護業界に参入する企業が増加しました。特に2023年の異業種M&Aは17件に達し、過去6年間で最多となっています。医療・介護業界の企業が異業種との連携を進めることで、新たなビジネスモデルの構築や競争力の向上が期待されます。これにより、業界内のイノベーションが促進されるでしょう。
4. 成約事例の分析
具体的な取引事例として、株式会社明光ネットワークジャパンが児童発達支援事業を手がける株式会社ランウェルネスを子会社化することを発表しました。この取引は、児童発達支援事業への新規参入を目指しており、教育事業のシナジー効果が期待されています。
また、株式会社テノ.ホールディングスは、高齢者介護施設を運営するウェルファを子会社化すると発表しました。このM&Aは、介護事業のさらなる拡大を目的としており、テノグループの長期的な企業価値向上に寄与すると考えられています。
5. 今後の展望
介護業界におけるM&Aは今後も増加すると考えられます。人材確保や事業の効率化に向けたM&Aが鍵となり、企業は互いに協力しながら成長を図る必要があります。高齢化に伴うニーズの増加を背景に、競争はさらに激化することが予想されるため、企業は課題解決に向けた迅速な対応が求められるでしょう。
M&A総合研究所は今後も引き続き、業界の動向を注視し、さまざまな視点から分析を行っていく予定です。