大阪大学大学院工学研究科とTOPPANホールディングスが協力して開発した新しい3D細胞培養技術「invivoid®」が、がん治療における新たな可能性を示しています。2017年からの共同研究の成果として、特に悪性度の高いがんを体外でより忠実に再現できる技術が進化を遂げました。
「invivoid®」技術は、細胞との相性が良いコラーゲンを細断し加工したコラーゲンマイクロファイバー(CMF)を使用し、これを基にした新たな3D細胞培養方法が開発されました。これにより、培養した腫瘍組織は、従来の方法で培養したものよりも活性酸素(ROS)への抵抗力が向上することが確認されました。特に、悪性のがん細胞が持つROS対抗の能力をより高く再現できる点が重要です。
研究者たちは、一般的な2D培養と異なり、CMF内で育てたがん細胞はROSを蓄積しにくく、これにより抗酸化物質であるグルタチオンの生成が促進され、長期的に細胞の特性が維持されることが確認されました。このような強化されたROS抵抗性は、がん治療における新薬開発の際に、より正確で信頼できる評価につながると期待されています。
本研究は国際科学雑誌「Materials Today Bio」にも掲載され、その内容は多くの研究者や医療従事者から注目されています。生体内のがん組織は多くの要因によって変化するため、細胞培養技術の革新は新薬開発において非常に重要です。
TOPPANホールディングスと大阪大学は、CMFを基にした新たな3D細胞培養技術を活用して、さらに多くの成果を社会に提供していく方針です。これにより、がん個別化医療や再生医療など、様々な分野において新たな展望が開かれることでしょう。
今後の研究モットーとして、がんの特性を正確に再現できる腫瘍モデルの構築を進め、臨床応用へとつなげていく計画も発表されています。研究はまだ進行中ですが、「invivoid®」の登場によって、がん治療の最前線に立つ革新的な技術が花開くことが期待されているのです。