栽培した作物を無駄にしない農業の未来と挑戦

近年、気候変動が農業に与える影響は深刻さを増しており、猛暑や豪雨などが頻繁に発生しています。このような中で、農業者にとって「育てた作物を無駄にせず届ける」ことがますます難しい課題となっています。千葉県銚子市に本社を構える株式会社くるくるやっほーは、そんな厳しい時代でも「作ったものすべてに責任を持つ」という理念のもと、規格外のとうもろこしを余すことなく活かす取り組みに挑んでいます。

取り組みの背景

同社が手がける「アフロコーン™」は、千葉県銚子市の気候風土を活かし、甘みの強いとうもろこしとして知られています。しかし、異常気象の影響で粒の不揃いや甘さのバラつきが生じ、出荷基準に満たない“規格外”のとうもろこしが増加しています。これまで廃棄されていたこれらの作物を「すべて活かす」ことが、同社の使命であり、未来の農業への第一歩としています。

また、農薬や肥料の価格が高騰し野菜の生産コストが上昇する中、消費者が価格に敏感であるため価格転嫁が難しく、農家の経営を圧迫しています。こうした状況下において、生産資材のコストと消費者のニーズとの間で揺れる農家を救うべく、同社は2022年から加工品（６次化）の開発に本格的に取り組んでいます。

６次化による“ゼロ廃棄”の実現

現在、同社が展開している主な加工品は以下のとおりです。どれも見た目は規格外であっても、甘さや風味はそのまま。高品質のとうもろこしを利用した商品です。

1. 冷凍とうもろこし: 穫後すぐにカットし、急速冷凍で鮮度を閉じ込めています。内容量300g〜400gで、800円（税込）。
2. カリッとアフロコーン: 規格外の粒を油で揚げ、ほんのり塩味を加えて仕上げたスナック。3袋で1,200円（税込）。
3. とうもろこし蒸留酒: 自社の圃場で厳選したとうもろこしを使用し、2〜3年の熟成を経て商品化。価格未定。
4. とうもろこしジェラート: 甘さと香ばしさを生かした絶品のジェラート。3個（80ml×3）で1,800円（税込）。

これらの加工品は、保存性が高く、特に冷凍食品やスナックはロスが出にくい特徴があります。さらに、蒸留酒やアイスには賞味期限の表示義務がなく、長期間にわたり販売・提供できるため、加工品としての価値は非常に高いものとなっています。

循環型農業への願い

同社の代表、坂尾英彦氏は「育てた作物には、命が宿っている」と語ります。形が悪い、あるいはサイズが小さいからといって、それらを無駄にするのは避けたいとの強い思いを持っています。加工品によって新たな価値を見出し、消費者の興味を引き、農業体験や畑訪問につなげることが循環の一環であると考えています。実際、消費者が畑でとうもろこしを収穫し、食と農の関係を理解してもらうことが目指されているのです。

今後の展望

今後、同社は規格外とうもろこしをテーマにした食育や体験型プログラムを企画中です。この取り組みを通じて、地元の農業と都市部の消費者との関係を強化し、農業体験を通じて食品ロスをすることなく楽しむ仕組みを広げていくことを目指しています。さらに、食育や観光、環境学習を組み合わせたプログラムを展開し、都市部と農業との往復可能な関係の構築を進める意向です。