防災の日に考える農作業事故とテクノロジーの役割
9月1日は防災の日。これは関東大震災の日でもあり、毎年この日には各地域で防災に関するさまざまな取り組みが行われます。しかし、防災は火災や地震だけに留まらず、農作業中の事故を防ぐことも重要です。農業は日本の基幹産業の一つでありながら、他の業種に比べて死亡事故が非常に多いことが指摘されています。
農業の事故率とその背景
近年のデータによると、農業は産業別の死亡事故の発生件数で圧倒的な1位を占めています。建設業は高所での作業が多く危険とされていますが、農業の死亡事故の件数はそれをも上回る2倍以上です。全産業の平均と比較すると約9倍の高さです。
特に問題なのは、農業従事者の年齢です。農作業の死亡事故は65歳以上の高齢者が約80%を占め、80歳以上は約40%に達しています。この高齢化が事故のリスクを増大させているのです。さらに事故の原因としては、69%が機械作業に関連しており、熱中症や用水路での事故も無視できない存在となっています。
テクノロジーによる事故予防の可能性
そこで、農作業中の事故を減少させるためのテクノロジーが注目されています。特に、笑農和が開発した「paditch」は、農業における水管理を自動化するスマート水田サービスとして注目されています。このサービスは、以下の機能を提供しています。
- - 水温・水位の自動管理
- - スマートフォンやPCを使った水門の遠隔開閉
- - タイマーによる自動開閉機能
- - 制御エリアの選択的開閉
- - 異常事態のアラート機能
- - データのクラウド管理
これにより、農家は現場に行く頻度を減らし、事故のリスクを低減できるだけでなく、熱中症対策にも寄与します。例えば、大雨や台風時には自宅に居ながら水管理を行うことができ、作業者の安全を守ることが可能となります。
専門家の見解
一般社団法人日本農業情報システム協会(JAISA)の渡邊智之氏は、農作業中の事故が多い理由として、孤独な作業環境や安全対策の不足、農家の安全意識の薄さを指摘しています。これらの根本的な問題に対して、テクノロジーの活用が「机上の空論」ではなく、実際の解決策になると考えられます。例えば、血圧や心拍数などのバイタルサインを遠隔で管理し、リアルタイムで危険を察知するシステムを構築することができれば、農作業の安全性が高まるのではないでしょうか。
農業が抱える「働き方」と「事業継承」の闇
農業には長時間労働が常態化しており、農家の高齢化が進んでいるため、事業継承が遅れる事例が多く見受けられます。これも農業の持続可能性に対するリスク要因の一つです。従事者の減少と高齢化が進む中、残された人々の安全を守るためにも、テクノロジーによる解決が必要です。
未来に向けた農業の姿
2019年は「スマート農業元年」と呼ばれ、多くの企業がアグリテックの分野で活動を進めています。農林水産省もスマート農業の推進に向けて、資金を投入する方針です。これにより、データを活用した農業が普及し続ければ、事故のリスクが低下するだけでなく、働き方の改革にもつながるでしょう。
今後、paditchのようなスマート農業がますます広がっていけば、日本の農業はより安全で、生産性の高いものになっていくはずです。また、農業の在り方や事業継承の問題にも取り組むことで、持続可能な農業を実現できるでしょう。私たち一人一人が防災の大切さを理解し、農業における事故の防止にも目を向けていく必要があります。