印刷でバリア性能向上
2022-11-17 10:30:01
新たな印刷技術でガラス並の水蒸気バリア性能を実現
ガラス並みの性能を持つウルトラ・ハイバリア技術
1. 背景
バリア技術は様々な産業で欠かせない要素となっています。特に水蒸気や酸素を遮る性能は、OLEDやトランジスタ、太陽電池などのデバイスに利用されるほか、食品や医療品の包装にも必須です。従来の真空成膜法(スパッタ法、CVD法など)は高いバリア性能を実現しますが、製造コストや効率が課題でした。一方、印刷技術は低コストであるものの、そのバリア性能は相対的に劣っていました。
2. 研究成果
山形大学硯里研究室が行っているのは、印刷・塗工可能な新たなウルトラ・ハイバリア技術に関する研究です。特に、室温下で真空紫外光を使用して得られる緻密な無機膜が注目されています。これまで、ポリシラザンを用いてVUV光照射により高性能なSiN膜を得ることに成功しており、今回新たに水蒸気透過率5x10-5 g/m2/dayを達成しました。これは従来の技術を1桁上回る成果で、真空成膜に匹敵する性能と言えます。
2.1. 特徴と利点
新たなバリア技術は光学的に透明で、かつ屈曲性を持っています。そのため、柔軟なデバイス設計も可能です。また、印刷・塗工プロセスにより、コストを抑えつつ、低炭素化も実現しています。具体的には、必要な部分のみを選択的に塗布できるため、「欲しい場所に欲しいバリア」を実現することが可能です。これは製造の効率を向上させる要素の一つです。
3. 今後の展望
Society5.0の進展に伴い、IoTデバイスが急増しています。このため、デバイス保護に特化したバリア技術の需要が高まる見込みです。既存の技術に比べ、本研究が提案する印刷プロセスは、高スループットと低価格化を同時に実現できます。さらに、将来的には印刷技術を用いて酸素バリア性能向上の研究も行う予定です。これにより、食品包装や医療用包装といった分野にも応用が期待されます。
4. 用語解説
水蒸気透過率
水蒸気透過率とは、単位面積あたり、単位時間で透過する水蒸気の量を示す指標です。数値が小さいほど、高バリア性能を示します。
真空紫外光
真空紫外光とは、波長が10〜200nmの紫外線を指します。特に、バリア膜の形成にはこの光が効果的です。
5. 関連情報
本研究は、特許出願(特願2022-148356号)および掲載論文(Advanced Materials Interfaces, 2022, 2201517)に記載されています。また、本研究はJST A-STEP、COIおよびOPERAプログラム、さらにJSPS科研費基盤Cからの支援を受けています。これにより、今後も技術の発展が期待されます。
会社情報
- 会社名
-
国立大学法人 山形大学
- 住所
- 山形県山形市小白川町一丁目4-12
- 電話番号
-
023-628-4006