東海初!「喫茶の碗の物語」特集展示
今年の秋、愛知県陶磁美術館において「喫茶の碗の物語-中国陶磁への憧れ、そして…」が開催されます。この特集展示は、平安時代からの日本の喫茶文化と中国陶磁の魅力をたっぷりと伝える内容となっており、訪れる全ての人々に新たな発見を提供します。
喫茶文化の始まり
抹茶の喫茶法は、平安時代に禅僧によって初めて日本に伝えられました。そのルーツは中国にあり、最初は中国製の唐物を使って喫茶が行われました。その後、高麗朝鮮で作られた「高麗物」や、日本自身で制作された「和物」など、さまざまなタイプの茶碗が誕生しました。これにより、喫茶文化は多様な美のかたちを持つようになりました。
特に、唐物の茶碗はその完璧な美しさから、茶の湯において欠かすことのできない存在でした。高麗茶碗や灰被天目茶碗は、侘びの精神の表れとして新たな価値を持ちました。桃山時代になると日本独自の美意識がさらに強調され、独自のスタイルを持った茶碗が生み出されていったのです。
瀬戸窯と美濃の存在感
中世の日本において、瀬戸窯は唯一の施釉陶窯であり、14世紀から唐物茶陶を手本にすることで和物茶陶の制作を始めました。瀬戸や美濃は、次第に唐物に迫るクオリティを持つ和物の茶碗を製作し、茶の湯の隆盛と共にその素晴らしさを広めていきました。特に桃山時代には、「志野」や「織部」といった独自の作風が多くの茶人に評価されました。
この特集展示では、唐物茶陶と和物茶陶の流れを大きな視点で捉え、瀬戸と美濃が生み出した喫茶の碗の魅力を一挙にご紹介します。展示される重要美術品には「大井戸茶碗 有楽井戸」など、日本の陶磁の真髄が凝縮されています。
体験コーナー「8Kで文化財ふれる・まわせる名茶碗」
この展示の目玉の一つとして、体験コーナーが設けられています。コロナ禍の影響で新たな美術鑑賞が求められる中、東京国立博物館とシャープ株式会社が共同開発した「8Kで文化財ふれる・まわせる名茶碗」は、見るだけでなく、触れて感じることのできる新しい形の展示です。
70インチの大型8Kモニターで、実物の茶碗にそっくりなレプリカを手に持ち、モニター上でその美しさを360度自由に楽しむことができます。具体的には、「青磁茶碗 銘 馬蝗絆」「大井戸茶碗 有楽井戸」「志野茶碗 銘 振袖」の8K高精細画像が鑑賞可能で、展示では見ることのできない細部をじっくりと観察できます。
特別講座とイベント
また、特別講座「喫茶の碗の物語 その展開と魅力」も開催されます。これは、さらに深い理解と楽しみを促すためのイベントで、誰でも参加できる内容です。
- - 日時: 11月13日(土)午後1時30分~3時
- - 会場: 愛知県陶磁美術館本館地下講堂
- - 講師: 伊藤嘉章(当館総長)
展示情報
この特集展示は2021年10月9日から12月12日まで、愛知県陶磁美術館の本館2階第3展示室で行われます。入館は午後4時までで、展示を観覧することで、日本の豊かな喫茶文化に触れられることでしょう。さらに、観覧料は一般400円、高大生300円、中学生以下は無料とお手頃です。
この特集展示は、地域の文化遺産を現代に活かした貴重な機会です。ぜひ、皆さまのご来場をお待ちしております。