千葉県に位置する「学校法人 羽田学園 認定こども園 千葉さざなみ幼稚園」が、2025年度のグッドデザイン賞を受賞しました。この幼稚園の設計は、福井県敦賀市に本社を置く株式会社ジャクエツによるもので、地域とのつながりと文化の継承に重点を置いたデザインが高く評価されました。
千葉さざなみ幼稚園は、ただ子どもを預ける場所ではなく、地域の文化や風習を伝える重要な役割を果たしています。特に、園舎の中心に設けられた交流の場であるアトリウムは、地域の記憶を象徴する納涼台と結びついており、過去の風景を園内外に展開することで地域との一体感を生み出しています。
1. 背景とコンセプト
千葉市の高洲地区は、かつて海が広がり納涼台が存在した地域ですが、1960年頃からの埋め立てによりその姿は変わりました。千葉さざなみ幼稚園は、この地域の歴史を反映した設計が施されており、地域の記憶を子どもたちに伝えることを目的としています。園名に含まれる「さざなみ」や貝殻を用いた園庭の土は、かつての海の名残を感じさせます。
2. デザインの具体例
設計コンセプトには、埋め立て前の土地や既存園舎の記憶を引き継ぐことが盛り込まれています。特にアトリウムは、園児や地域住民と交流するスペースであり、保育室と円形のガラス回廊が巧みに配置されています。回廊は地域へ開かれ、納涼台を模しています。この設計により、園舎は地域と緩やかに結びつき、親や地域住民の交流の場としても機能しています。
3. 審査員の評価
審査員たちは、地域の記憶を継承しつつ子どもたちの愛着を育む姿勢に共感を示しました。中央のアトリウムが園児たちの集まる空間として利用され、周囲の回廊はセキュリティーにも寄与しながら外部との大きな開口部を持つデザインが評価されています。内部から見ると、回廊の開口部が地域の風景を楽しむことを可能にしており、地域住民は園児たちの笑顔を見ることで日々の生活が楽しくなると感じることができます。
4. 未来への期待
この幼稚園の設計は、ただの建物ではなく、地域を育む社会的基盤としての機能を持ちます。南側には開放感を持った納涼台が設けられ、子どもたちは自由に楽しむ空間が広がっています。また、2階への階段には波を表現した本棚が設けられており、図書コーナーとして利用されています。日没後には、地域を照らすランドマークとしての役割も果たしており、防犯にも寄与する素晴らしいデザインとなっています。
株式会社ジャクエツは、1916年から活動を続ける企業で、「未来は、あそびの中に。」をスローガンに掲げ、地域社会の課題解決に向けたサービスを提供しています。このような取り組みを通じて、質の高い遊びの環境をデザインし続けることで、子どもたちの成長を支え、未来の価値を創造していくのです。