エコツーリズムと循環型農業の新たな挑戦
西表島ホテルは、世界自然遺産に選ばれた美しい環境を背景に、日本初の「エコツーリズムリゾート」を目指しています。特に注目すべきは、同ホテルがスタートさせた「環パインプロジェクト」です。このプロジェクトは、島内のピーチパイン生産を支えるため、生ごみを堆肥化し、その堆肥を使用した循環型農業を促進する新しい試みです。
プロジェクトのスタート
このプロジェクトは、2022年に島内のパイン農家との協力を始めて以来、成長を続けています。2024年には、レストランで生じた生ごみを堆肥化し、完成した堆肥をパイン農家に還元するという取り組みが始まります。このように、ホテルの活動が直接的に地元農業へと還元される仕組みが構築されています。
循環型農業と堆肥化プロセス
「環パインプロジェクト」では、堆肥化のためにホテル内に堆肥舎を設置し、スタッフが毎日生ごみの温度を確認しながら管理しています。使用する床材は、島内の米農家から調達したもみ殻と米ぬかをベースにし、島内資源の有効活用を図っています。生ごみと床材を混ぜ、適切な条件下で堆肥を発酵させることで、健全な土壌を育てる素地を作ります。
2024年7月からは、堆肥の再発酵工程に入り、約3〜4ヶ月間のプロセスを経て完熟堆肥が完成します。この堆肥が、ピーチパインの栽培にどのように寄与するかが大きなポイントです。
ピーチパインの未来
完成した堆肥は、島内のパイン農家に還元され、実際にピーチパインの苗の植え付けが行われています。収穫までには2年かかるものの、2026年にはこの堆肥を用いて育てたピーチパインが宿泊者に振る舞われる予定です。このように、循環型農業のサイクルが確立されれば、西表島の特産品であるピーチパインの持続可能な生産が期待されます。
地元コミュニティとの連携
プロジェクトは西表島内の様々な関係者との協力によって進められています。特に注目したいのは、西表島トロピカルフルーツ生産組合との連携で、この組合は地域の農業の持続可能性を高めるための活動に取り組んでいます。既存の資源を最大限に活用し、美味しい果物の生産を目指す姿勢が、プロジェクト全体の理念に深く結びついているのです。
SDGsへの貢献
星野リゾートは経済価値と社会価値の両立を目指したCSV(共通価値の創造)経営を掲げ、SDGsの目標達成に向けた努力を続けております。「環パインプロジェクト」は、特に「つくる責任つかう責任」や「質の高い教育をみんなに」といった目標に寄与し、西表島の持続可能な未来を築く手助けをすることを目指しています。
まとめ
「環パインプロジェクト」は、地域資源を活用しながら進化し続け、市場に出回ることが少ないピーチパインの生産を促進することで、観光資源としての価値も高めています。2025年の「春のピーチパイン祭り」は、こうした努力の集大成ともいえるイベントになるでしょう。このプロジェクトを通じて、西表島が持つ自然の豊かさと農業の持続可能性が融合し、地域全体の発展に寄与することが期待されます。