高齢化進む歯科業界、倒産・廃業が急増中の背景
近年、歯科業界では深刻な危機が訪れています。2024年に発生した歯科医院の倒産件数は前年の1.8倍に達し、休廃業を含めると126件という過去最多を更新しました。これは帝国データバンクによる調査結果で、特に高齢化が大きな要因とされています。
倒産が増える背景
2024年の集計では、歯科医院の倒産が前年比で急増し、特に負債が1000万円以上の法的整理症例が目立ちます。昨年の統計からも、歯科医院の廃業は104件に対して、今年は早くも126件に達しました。さらに、歯科医の平均年齢が70歳近くに迫っていることも、この状況を深刻化させている原因の一つです。
調査によると、休廃業・解散に至った歯科医院の代表者の平均年齢は69.3歳。その中には90歳を超える高齢の歯科医もおり、業界の世代交代が急務となっています。このままだと、経営を続けることが困難になる医院が増えていくことは明白です。
人手不足と競争の激化
さらに、歯科衛生士などの人手が不足していることに加え、後継者難が影響を及ぼしています。このような状況では、経営を続けるためには新しい処方や治療法の導入が求められますが、高齢の歯科医にはこの変化が厳しいという現実があります。
また、歯科医院は全国に「コンビニよりも多い」と言われるほど供給過剰の状況にあります。これにより、患者の取り合いが続き、特に価格競争が厳しくなっているため、収益環境は一層悪化しています。
物価上昇があらわにした経営の厳しさ
昨今の物価高騰も、歯科医院にとって大きな痛手となっています。虫歯治療で使用する銀などの合金の値上がりは、材料費が直接的に経営を圧迫しています。さらに、保険証による電子化対応など、新たな設備投資の必要性も高まっており、高齢の歯科医師にはこの負担が重くのしかかっています。
新たなニーズと高付加価値への転換
一方で、虫歯治療からホワイトニングなどの審美治療にシフトする患者も増えてきました。患者側のデンタルヘルスに対するニーズが多様化しており、若い歯科医は高付加価値な治療を提供することで顧客を獲得しようとしています。こうした新たな波にうまく対応できる若手と、廃業を余儀なくされる高齢医師との間で、業界の二極化が進行すると予測されています。
結論
歯科医院の倒産・廃業問題は、ただの経済的な問題ではなく、地域の医療サービスの質にまで影響を及ぼす課題です。この流れをどのように改善していくか、業界全体で取り組む必要があります。これからの歯科医療は、若い力が重要な役割を果たすことが期待されており、そのためのサポート体制の強化が急務だと言えるでしょう。