鈴木財務大臣、アベノミクス評価と財政運営の持続可能性を語る - 緊縮財政への懸念と金融政策への期待
鈴木財務大臣、アベノミクス評価と財政運営の持続可能性を語る - 緊縮財政への懸念と金融政策への期待
令和6年7月9日、鈴木財務大臣兼内閣府特命担当大臣は閣議後記者会見を行い、安倍元首相の財政運営や今後の金融政策に関する質問に答えた。
まず、安倍元首相の財政運営について、鈴木大臣は「アベノミクスと呼ばれるものは、大胆な金融政策及び民間投資を喚起する成長戦略とあわせて機動的な財政政策、いわゆる3本の矢を推進していたことで、デフレではない状況をつくり、GDPを高め、雇用を拡大するなど、日本経済の成長に大きな役割を果たしたと、そのように認識をしております。」と評価した。
一方で、日本の財政状況は、債務残高対GDP比が主要国の中で最悪の水準にあり、新型コロナウイルス感染症や物価高騰への対応にかかる累次の補正予算の編成により、より一層厳しさを増しているという現状を認識していることを強調した。
ハイパーインフレや円の暴落については、「潤沢な国内の家計金融資産等を背景に、低い金利水準で安定的に国債が国内で消化され、財政に対する信認が確保されてきたことから、これまでのところ発生しておりません。しかし、ひとたび財政の持続可能性や財政運営に対する信認が失われた場合には、金利の急上昇や過度なインフレが生じて国民生活に多大な悪影響を与える可能性は否定できないと考えています。」と懸念を示した。
さらに、そのような状況が現実のものとなった場合に、緊縮財政に舵を切ることになれば「身近な行政サービスのために十分な予算を確保することができなくなって、国民生活に極めて大きな負担を求めることになるおそれがあると考えております。」と述べ、緊縮財政への懸念を表明した。
鈴木大臣は、過度な金利上昇やインフレは、それが起こってから対処するのではなく、未然に防ぐことが重要であり、中長期的な財政の持続可能性への信認が失われることのないよう、平時から財政規律を守ることが必要であると考えていることを改めて強調した。
また、今月末の日銀金融政策決定会合に先立ち、債券市場参加者と日銀との間で行われる協議について、「ある意味重要な協議だと思いますので、どういった協議が行われていくのか、それは注意深く見て行きたいと思います。」と述べ、具体的な意見は示さなかったものの、協議の重要性を認識していることを示した。
さらに、三菱UFJ銀行の行員による顧客企業の情報の漏洩疑惑について、「インサイダー取引の懸念があるということにつきましては、証券取引等監視委員会において調べているということなのだと思いますが、ご承知のとおり証券取引等監視委員会は独立した職権が与えられ、それを行使するとされていることでありますので、個別の調査等について金融庁の立場でお答えすることは控えなければならないと、そのように思っています。」と述べ、証券取引等監視委員会の独立性を尊重し、具体的なコメントは控えた。
今回の会見では、安倍元首相の財政運営に対する評価とともに、財政状況の厳しさ、ハイパーインフレや円の暴落のリスク、そして緊縮財政への懸念などが示された。今後の金融政策の方向性については、日銀金融政策決定会合に向けた協議の結果を見守る必要がある。