次世代mRNAワクチンで新型コロナ変異株に対する持続的免疫を実現

次世代mRNAワクチンの新展開

新型コロナウイルス感染症（COVID-19）は、ウイルスの変異株によって継続的な脅威をもたらしています。その中で、免疫応答の持続性と効果が求められる中、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所とVLP Therapeutics Japan株式会社などの共同研究グループは、細胞膜表面に新型コロナウイルス受容体結合ドメイン（RBD）を発現するレプリコン（次世代mRNA）ワクチンを開発しました。この新たなアプローチは、持続的かつ広範な免疫を誘導する可能性があります。

研究の概要と成果

この研究では、霊長類モデルを使い、RBDを発現させるレプリコンワクチンの効果を検討しました。その結果、免疫応答が効率的にT細胞及びB細胞を活性化し、特に武漢株に対する防御効果が示されました。さらに、変異株に対するRBD特異的な抗体が少なくとも12ヶ月間維持されることも確認されました。この持続的な免疫効果は、次世代ワクチンの重要な特徴となります。

ワクチン設計の革新

開発されたワクチンは、アルファウイルスのレプリコン発現ベクターを基盤としており、自己増殖が可能です。これにより、抗原の発現レベルが高まり、免疫応答が強化されます。RBDのN末端にはSタンパク質のシグナル配列を、C末端にはインフルエンザウイルスの膜アンカーを融合させることで、B細胞受容体に対する抗原提示を効率化し、より強力な反応を引き起こすことが期待されています。

前臨床試験の結果

これまでの前臨床試験では、ハムスターや霊長類モデルでの攻撃接種試験において、新型コロナウイルスに対する高い液性及び細胞性免疫が確認されています。特に、感染者の中和抗体の多くがRBDを標的としており、ワクチンによって免疫反応は特定のエピトープに集中しています。レプリコンベクターを用いることで、抗原が細胞膜表面に高頻度で発現し、強力なB細胞応答を誘導することが可能となっています。

今後の展望

この次世代mRNAワクチンの臨床試験が進められており、さまざまな変異株に対しても適応できる可能性があることが期待されています。特に、ガンマ株RBDが他の変異株に対しても交差反応性を示すことが、今後のワクチン設計における柔軟性を示しています。この研究は、COVID-19だけでなく、他のパンデミック病原性ウイルスに対するワクチン開発戦略としての基盤技術となり得るでしょう。