2023年 日本EC市場を徹底解剖!経済産業省調査&Nint分析で読み解く
2023年は、EC市場全体が成長を続ける一方で、各ジャンルで異なる課題やトレンドが浮き彫りになりました。本稿では、経済産業省の「令和5年度電子商取引に関する市場調査」と、EC市場動向データ分析ツール「Nint ECommerce」を提供する株式会社Nintの独自分析結果を基に、2023年日本EC市場の現状を詳しく解説していきます。
1. 日本のEC市場全体の概況
2023年の物販領域におけるEC市場規模は14.7兆円、前年比4.8%の増加となりました。EC化率も9.38%と上昇しており、インターネットを通じた商取引の拡大が続いていることが分かります。
特に、楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングといった3大モールは、日本のEC市場全体の約69%を占める巨大な存在となっています。これらのモールは、前年比5.9%の増加と、EC市場全体の成長を牽引する力となっています。
しかし、コロナ禍からの回復、値上げ、送料の上昇など、市場環境は複雑に変化しており、各ジャンルで異なる影響が出始めています。
2. 主要ジャンル別市場分析
2-1. 生活家電、AV機器、PC・周辺機器
このジャンルは、EC化率が42.88%と、物販系の中でも特にEC化が進んでいます。2023年は、人流の活性化による在宅時間の減少や物価高の影響で、生活家電の需要は減少傾向にありますが、高価格帯商品への需要は増加しています。
Nintの分析では、3大モールにおける流通金額の増加は平均単価の上昇によるものであり、高機能・高価格帯の商品が人気を集めていることが分かります。
2-2. 衣類・服装雑貨
「衣類、服装雑貨」分野のEC化率は22.88%と高水準を維持しています。2023年は、オムニチャネル戦略の進展やコロナ禍からの回復、サステナビリティへの関心の高まりなど、様々な要因が市場に影響を与えました。
Nintの分析では、3大モールにおける流通金額の増加は数量の上昇によるものであり、需要の回復が顕著です。特に、男性向けの衣類ジャンルが伸長しており、スポーツメーカーの高機能ランニングシューズなどが人気です。
2-3. 食品、飲料、酒類
このジャンルのEC化率は4.29%と、他のジャンルに比べて低いものの、ネットスーパーや食品デリバリーサービスの普及により市場は拡大傾向にあります。2023年は、食品を中心に値上げが行われましたが、簡単に調理できる冷凍食品などの需要は依然として高いです。
Nintの分析では、3大モールにおける流通金額の増加は平均単価の上昇によるものであり、数量は減少しています。
2-4. 化粧品、医薬品
「化粧品、医薬品」分野のEC化率は8.57%です。2023年は、マスクの規制緩和や外出機会の増加により、化粧品全般の支出が拡大しました。特に、カラーコスメや香水などの需要が回復傾向にあります。
Nintの分析では、3大モールにおける流通金額の増加は平均単価の上昇によるものであり、数量は減少しています。
2-5. 生活雑貨、家具、インテリア
このジャンルのEC化率は31.54%と高水準を維持しています。2023年は、猛暑日の増加により冷感寝具などの需要が高まりました。また、在宅勤務の定着により、ホームオフィス向けの家具やインテリア商品の需要も依然として高いです。
Nintの分析では、3大モールにおける流通金額の増加は数量の上昇によるものであり、平均単価は若干の減少となっています。
3. 消費者行動の変化と平均単価の上昇
2023年は、多くのジャンルで平均単価の上昇が見られました。メーカーによる値上げ、エネルギー価格の高騰、円安などが主な要因です。消費者は、品質や付加価値を重視する傾向が強まり、高価格帯の商品が売上上位にランクインしています。
一方で、モールに出店するショップとしては、低価格帯商品の取り扱いが難しくなっており、送料無料の条件維持も困難な状況です。
4. 中小EC事業者の現状と課題
2023年は、競争激化やコスト上昇により、中小EC事業者の経営は厳しい状況となっています。特に送料の値上げは、中小事業者に大きな負担となっています。
Nintの見解では、型番商品の取り扱いも難しくなっており、中小事業者は独自の商品開発やサービスの差別化が求められています。
5. 3大ECモールの戦略と市場への影響
3大ECモールの流通額増加は市場全体の成長を支えていますが、出店料や手数料の値上げは、中小事業者に大きな影響を与えています。
3大モールは、データ分析を活用した戦略策定を強化しており、消費者の購買行動や市場トレンドを的確に捉え、最適な商品ラインナップや販売戦略を構築しています。
中小事業者は、3大モールの戦略に合わせた対応が必要となっています。
6. まとめ
2023年の日本EC市場は、成長を続ける一方で、複雑な変化もみられています。各ジャンルで異なる課題やトレンドが存在し、中小EC事業者は厳しい状況に直面しています。今後もデータ分析を駆使し、柔軟な戦略を展開することが、EC業界での成功の鍵となるでしょう。