X線分析技術で円山応挙の襖絵の謎を解き明かすリガクの挑戦
リガク株式会社は、兵庫県美方郡にある大乗寺が所蔵する、江戸時代の著名な画家、円山応挙の障壁画(襖絵)の分析に協力しました。本プロジェクトは、円山応挙の芸術に対する理解を深めるための重要な一環として位置付けられています。
襖絵とX線分析の融合
今回の測定は、リガクが持つ先端的なX線分析装置を利用して、円山応挙の襖絵の金箔の原色を復元するための研究として実施されました。この研究は、大乗寺の副住職である山岨眞應氏を中心に、元・海上技術安全研究所の千田哲也氏、画家であり東北芸術工科大学の田中武氏とも協力して行われています。
分析の目的と重要性
この分析は、円山応挙の芸術的意図や作品の制作過程、さらには修復による影響を科学的に検証することを目指しています。使用されたのは、サーモフィッシャーサイエンティフィック製の「Niton XL5 Plus」というハンドヘルド蛍光X線(XRF)分析計です。この装置を用いることで、非破壊的に組成分析が行え、多くのデータが収集されました。
具体的な分析内容
以下の三つの視点から、円山応挙の襖絵に関する詳細なデータが取得されました。
1.
制作時期の検証:
襖絵の中央から両端の金箔の組成に違いがあるかを測定しました。このデータは、異なる時期に制作されたことを示す可能性があるため、非常に重要です。
2.
金箔の遠近表現における利用:
色彩画の「芭蕉の間」では赤みが強く見える金箔が、墨絵の「孔雀の間」では青みがかった暗い金箔が使われていることが示唆されています。このような色調の使い分けが、どう表現されているのか、新たな知見が期待されています。
3.
江戸時代と明治時代の金箔の違い:
元の金箔と、修復時に加えられた明治時代の金箔の組成を比較することで、江戸時代の金箔に関する定量的なデータが得られる貴重な機会となりました。
文化財保全の未来
これらの分析結果は、円山応挙の画業や技法を理解するための重要な学術的資源として活用される予定です。リガクは、今後も科学技術を通じて文化財の保存とその文化の未来への継承に貢献していく考えです。
リガクグループについて
リガクグループは、1951年の創業以来、90か国以上で業務を展開し、膨大な実績を築いてきました。主にX線分析を専門とする技術者集団で、半導体やライフサイエンスなど多岐にわたる分野での応用が期待されています。日本国内での高いシェアも誇り、今後も社会に貢献する技術開発を行っていく所存です。詳細については、
リガクの公式サイトをご覧ください。