日米韓国民相互認識調査が明らかにした複雑な国際関係
調査概要
今年は日韓国交正常化60周年という節目の年。公益財団法人国際文化会館(API)が、韓国の東アジア研究院(EAI)および米国のKorea Economic Institute of America(KEI)と共同で実施した「第1回日米韓国民相互認識調査」が、その重要性を際立たせています。この調査は、日米韓3カ国の国民間における相互認識や主要な争点に関する意識を徹底的に分析し、世論の変化から政策的な示唆を引き出すことを目的としています。
調査結果のハイライト
1. 米国に対する印象
調査によると、日本人の約40.5%が米国への「良い印象」を持つ一方で、34.5%が「悪い印象」を示しました。特に現在のトランプ大統領に対する評価は厳しく、70.1%が「悪い印象」と回答しています。日米関係の重要性を認識する声は高いものの、将来の関係について「悪化する」と考える回答が44.7%に達し、危機感も浮き彫りになっています。これは、トランプ政権の経済政策に対する反発が影響しているとみられます。
2. 韓国に対する印象
韓国への印象も複雑で、良い印象を持つ人は24.8%にとどまる一方、51.0%が悪い印象を持っています。好印象の理由には韓国の文化があり、反対に歴史問題は否定的な印象の大部分を占めています。それでも、日韓関係の重要性を感じる日本人は54.1%に達します。今後の関係については、変わらないとの意見が44.9%を占めており、依然として難しい状況が続くことが示唆されています。
3. 台湾有事に対する懸念
調査では、台湾有事の発生が「ある」と考える人が42.1%。更に77.1%は、この問題が日本の安全保障や経済にとって重要だと認識しています。軍事的関与については意見が分かれ、「後方支援にとどめるべき」との意見が多く、軍事的関与に慎重な姿勢がうかがえます。
4. 核抑止に関する意識
北朝鮮の核脅威に対して、情報共有や戦略対話の必要性を感じる意見が多く見受けられましたが、日本の独自核武装には約63.0%が反対と、核兵器の保有に慎重な姿勢が強いことが明らかになりました。
5. 日米韓の安全保障協力
日米韓の協力強化には51.7%が賛成。一方で、中国の軍事的台頭に伴う懸念も強く、納税負担や国防の在り方については、国民の間で賛否が分かれています。国民は抑止力の強化の必要性を認めつつも、そのためのコストに対する慎重な姿勢を示しています。
結論
調査の結果は、日本国内の世論がいかに複雑であるかを浮き彫りにしました。日米同盟を不可欠とする一方で、米国のリーダーシップに対する不安や、韓国に対する歴史的な問題が影を落としています。また、台湾や北朝鮮の状況に対する認識は深刻で、今後の対応について多角的に意見が分かれています。これらの要素は、国際関係の安定に向けた関係構築において、国民理解と社会的合意を確立することが重要であることを示しています。
会社情報
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公益財団法人国際文化会館
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