新しいスピントルクダイオード効果
東京大学物性研究所の坂本祥哉助教と三輪真嗣准教授を中心とした研究チームが、新材料「カイラル反強磁性体」を使って新たなスピントルクダイオード効果を発見しました。これは、従来の強磁性体使用によるデバイスに比べ、はるかに高い周波数で安定した動作が可能です。
研究の背景
近年、通信技術の進化に伴い、データの処理速度と安定性が求められています。特に、Beyond 5Gに代表される次世代の超高速通信技術には、数十GHzという高い周波数帯での安定した信号処理が必要です。しかし、これまでは強磁性体を使ったデバイスの課題として、高周波での信号の強度が急激に減少してしまう現象がありました。
新材料カイラル反強磁性体の特性
研究チームは、「カイラル反強磁性体」と呼ばれる磁気的特徴を持つマンガン化合物(Mn3Sn)に着目しました。これらの材料を極限に薄くすることで、マイクロ波電流を印加した際に直流電圧が生成されることを発見しました。スピントルクダイオード効果では、電子のスピン運動が整流効果を生み出し、マイクロ波電流の検出感度を大幅に向上させることが期待されます。
研究成果の意義
本研究によると、カイラル反強磁性体を利用したスピントルクダイオードは、周波数が高くなるにつれて信号の強度を10倍から100倍も高く維持することができるとされています。これは、従来の強磁性体での問題を克服する可能性を秘めており、次世代のスピントロニクス技術や、高速通信の進展に寄与するでしょう。
今後の展望
研究成果は、2024年12月3日に英国の科学誌「Nature Nanotechnology」に掲載される予定です。この発表が、情報通信の新たな技術革新に繋がることが期待されます。
新しいスピントルクダイオード効果は、通信技術における新しい可能性を切り開くものであり、今後の研究と技術開発に大きな影響を与えることでしょう。
参考リンク
本研究に関する詳細は、
産総研WEBページでも確認できます。