酸性環境下でも機能する乳酸オキシダーゼ電極の開発に成功
東京理科大学の創域理工学部、先端化学科の四反田功准教授を中心とした研究グループは、斜入射小角X線散乱法(GI-SAXS)を用いて、酸性条件でも機能する乳酸オキシダーゼ(LOx)電極の開発に成功しました。特に、糖型界面活性剤であるスクロースモノラウレートを安定化剤として利用することで、pH 5.0の条件下でも電極の機能を80%に維持するという成果を上げています。この一連の研究は、高性能なウェアラブルデバイスの開発へとつながる重要なステップとされています。
研究の背景と必要性
近年、ウェアラブルデバイスの市場は拡大を続け、特に体液を用いた非侵襲性モニタリング技術が注目されています。しかし、体液、特に汗のpHは時に4.0に達し、乳酸オキシダーゼを含む酵素は本来の機能を失うことが懸念されています。したがって、酵素の安定性を保つための新しい手法が求められています。
この課題を解決するために、本研究ではスクロースモノラウレートのような糖型界面活性剤を使用し、酵素を包覆することで酸性環境でも安定させるメカニズムを探求しました。
具体的な研究成果
研究チームは、GI-SAXSを用いて電極上の安定化剤と酵素の構造を詳しく解析しました。まず、スクロースモノラウレートが形成するコアシェル型のミセル構造が、棒状に堆積しヘキサゴナル構造を形成。これにより、LOxはその中に埋め込まれ、酸性環境から保護されることがわかりました。スクロースモノラウレートなしの場合と比べ、安定化剤を用いた場合の応答電流は、pH 5.0でも80%の活性を維持しました。
また、研究の過程で得られた科学的データは、LI-SAXS法が酵素電極における安定化剤の機能を解明するための強力なツールであることも実証しました。これにより、今後のバイオデバイス開発が加速することが期待されています。
今後に向けた展望
この研究成果は、今後、汗中の乳酸をリアルタイムにモニタリングできるデバイスの開発に寄与することが見込まれています。特に、スポーツや熱中症対策において、汗中の乳酸値の計測はますます重要になってくるでしょう。四反田准教授は、「酸性環境でも安定して機能する酵素の確保は、今後のウェアラブルデバイスの進化に繋がります」と述べています。
本研究は、2025年7月26日に国際学術誌『Langmuir』に掲載され、広く科学界にその成果が知られることになりました。
参考文献
本研究は、日本学術振興会の科研費の助成を受けて実施されました。論文に関する詳細は、
東京理科大学の公式ウェブサイトを参照してください。